名画の食卓を読み解く 大原千晴著
食事風景や食べ物を描いた絵を21枚選び出し、メニューや食材の紹介はもとより、その当時の社会状況や食文化を解説した異色の西洋史書。題名から泰西名画の羅列を期待すると少々裏切られるはずで、壁画やタペストリー、さらに書物の挿画などが続き、絵画も中世以前のものが少なくない。もっともそれだけ時代や地域に広がりが生まれ、テーマは多彩となった。
ルノワールの明るく健康的な作品(舟遊びの人々の昼食)がモンマルトルの夜の世界とつながっていく話など、読むほどに名画を見る目も違ってこざるをえない。修道士は肉をたらふく食べていた反面、西洋なら肉食という思い込みを引っ繰り返す一節もある。権威としての宴席、着席順、食器など微に入り細をうがつうんちくは、フランスのカフェ、米国の簡易食堂やカウボーイの食事、さらに英国のアフタヌーンティーへと広がり、西洋文化への先入見を否定されること再三に及ぶだろう。(純)
大修館書店 2310円
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