JAL上場後も続く公正競争論の裏側
上場ありきのJAL
ANAや自民党はそもそも民主党政権や企業再生支援機構が主導した株式上場による出口戦略を批判。現機構の前身に当たる産業再生機構が行った03~07年の事例に倣うべきだというスタンスだ。
たとえば、産業再生機構が携わったダイエーは支援後に丸紅へ、カネボウでは化粧品部門を花王に売却するなど、勝ち残り企業に配慮した手法が取られた。国会(国土交通委員会)の議論でも「(現機構の保有している)JAL株を競争入札にかけ、ANAを含む競合他社や投資家に対して買収の機会を与えればよかった」(小野展克・嘉悦大学准教授)といった参考人の意見が出ていた。
しかし、産業再生機構の事例とJALの案件では根本的な違いがある。JALを競争入札にかけると、事実上買収会社はANA1社に絞られ、日本の国際線会社は独占になる。つまり、これを是とするか、非とするかで、JAL再生の手法はまるで変わってくる。
国土交通省のスタンスは「国際線は競争政策上、2社体制が望ましいということで従来一貫している」(航空局)。また、企業再生支援機構も「独占はいけない。健全な競争環境が市場経済のためになると考えている」(瀬谷社長)。
これに対し、ANAや自民党が悔しがるのが、当初官邸などが検討していたJALの破綻処理策が実現しなかったことだ。破綻が秒読みに入っていた09年末ころ、官邸や経済産業省、財務省の混成部隊は、JALの国際線部門のみを切り出してANAに統合し、国内線専業としてJALを再生させるプランをシミュレーションしていた。
当時を知る関係者はこう語る。「国内線は独占禁止法で一緒になるのは無理だが、国際線なら外資系のシェアも高いのでクリアできると踏んでいた。当時、ANAも資金面など買収の準備を進めていた」。
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