「パナマ文書」の"震源地"に広がる不満と不安 たった1社の情報漏洩が、国全体に暗雲

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国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)などが3日に掲載した記事は、政治家や資産家らが40年間にわたって富を隠し続けてきたことを示し、世界中で捜査が行われている。

モサック・フォンセカは自社がハッキングの被害者だと主張。パナマの法曹界でも、たった1社からの情報漏洩が同国全体の評判をおとしめビジネスにも響くのは不公平だとして、怒りや憂慮の声が巻き起こっている。

パナマ政府はスキャンダルに巻き込まれたすべての国とコンタクトを取っていると説明。また、フランスがパナマを非協力的な租税回避地としてブラックリストに再び載せると表明したことに対し、報復措置もあり得るとの姿勢を示した。

カフェで弁護士の夫と一緒に朝食のサンドイッチを食べていたジーマ・アラウズさん(58)は、報道が出た3日以降に、知人の弁護士が契約を2件ふいにしてしまったと語る。「わが国に悪いイメージを与えると心配している。あれは事実を反映していない」。

ロイターはゴンザレス氏を含め、20人を超える弁護士に話を聞いた。その大半は、今回の件がパナマに与えるイメージは不公平だと抗議。同国では昨年成立の資金洗浄規制法が、非常に厳格に適用されていると指摘した。

ゴンザレスは一例として、ある顧客が曲芸用飛行機をエチオピアの投資家に売却するためオフショア企業に引き渡そうとしたが、資金洗浄規制に触れる可能性が出てきたため撤回したと語った。

「CIAの陰謀だ」との声も

5日夜はパナマ法曹界の中心とされる大学も、いかめしい雰囲気に包まれていた。噂やゴシップに混じって、漏洩の黒幕は米中央情報局(CIA)や経済協力開発機構(OECD)ではないか、との陰謀説もささやかれていた。

法律業界に深刻な影響が出るかもしれないとの懸念も強い。マリア・イザベル・サラビア弁護士は「顧客には集団ヒステリーが起きている」「じわじわと影響があると予想している。私たちの顧客は、自身が犯罪者であるかのように感じている」と語った。

(記者:エリダ・モレノ 編集:サイモン・ガードナー、グラント・マクール)

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