東京電力の「社債市場復帰」は高いハードルだ 持ち株会社に移行も、経営安定化へ難題山積

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持株会社、発送電分離で握手する東電グループ首脳

新設された小売りおよび火力発電子会社は、従来の社内取引をやめ、4月1日以降は「電力取引契約」に基づくビジネスベースでの契約に切り替えた。電力供給が契約通り行われない場合には、火力発電子会社は小売り子会社にペナルティ料金を払うことになる。

当面、小売り子会社による火力子会社からの調達量が大きく変わることはないと見られるが、「今後、採算が合わないことを理由に小売り子会社の購入対象から外された発電所をどうするかは大きな課題。コスト競争力がないと判断した場合には運転をとりやめたうえでリプレースする選択肢もある」(石田氏)という。

JERAでは自前での資金調達により、今後15年間に1200万キロワット程度の国内火力発電所の新設・リプレースを計画している。これは現在の最新鋭の火力発電所を10前後作る計画にほかならない。その際、JERAが発電した電力が東電小売り会社のライバル他社に販売される可能性もある。

具体性欠く顧客獲得戦略

一方、小売り子会社が生き残る道は、既存の関東エリアにとどまらない全国展開の加速だ。すでに異業種のソフトバンクやTOKAIホールディングスなどとの提携により、関西や中部圏内での電力販売に踏み切った。

関東圏で東電は、電気を多く使う家庭をターゲットにしたダイレクトメールや電話を通じての顧客防衛に力を注いでいる。その成果はある程度現われており、首都圏の約2000万世帯の家庭のうち、東京ガスなどライバル企業への契約切り替えは2%程度に過ぎない。

ただ、圧倒的多数を占める契約変更を決めていない層にいかに魅力的なサービスを提供できるかが問われるのは東電も同じ。小売り部門を率いる小早川智明・東電エナジーパートナー社長は「ビッグデータやIOTを顧客サービスに活用していきたい」と述べているが、まだその具体像は見えない。調達コスト削減につながるはずの2度にわたる火力電源入札もうまくいっていない。

東電に対しては今2016年度末に、国の組織で現在の筆頭株主である原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、原賠機構)による「責任と競争に関する経営評価」が実施される。これは現在の再建計画である「新・総合特別事業計画」に盛り込まれた経営目標がきちんと達成されているかの検証だ。

達成が確認された場合には、原賠機構による議決権比率が50%未満に下がり、機構からの役職員の派遣終了などにより、東電は従来の「一時的公的管理」から「自律的運営体制」に移行する。なお、「責任」が新総特で「福島原発事故への恒久的な対応体制の構築」と定義されているのに対して、「競争」とは「新たな電力事業モデルの構築による競争」を意味している。

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