最強トヨタを率いる「御曹司」が持つ本当の力 豊田章男はなぜ色眼鏡で見られてしまうのか
自動車と並ぶ2枚看板だった電機はすでに地盤沈下していたが、ここに来て東芝、シャープの凋落も鮮明化し、かつての栄光の姿は見る影もない。資源高で元気だった総合商社も資源安の逆風に沈んでしまっている。結果、日本経済の自動車依存度はますます強まっている。それは事実上、トヨタ頼みを意味する。
一方で、日本の自動車メーカーを取り巻く事業環境は急速に厳しくなっている。為替は円安進行が止まり、一転円高基調を強めている。新興国経済の落ち込みで世界的な自動車販売にもかげりが見られる。
長期的に見ても、自動車業界の大きな課題である環境規制強化は継続している。加えて、自動運転という新しい波が押し寄せている。
今やトヨタのライバルは、独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラルモーターズ(GM)、韓国の現代自動車だけにとどまらない。グーグルやアップルはもちろんまだ見ぬベンチャーにその地位を脅かされるかもしれない。
トヨタは勝ち残っていけるのか。その命運を握るのが、この6月で就任丸7年となる豊田章男社長だ。
独特なスタイルを持つ経営者
トヨタ創業者の豊田喜一郎氏を祖父に持つ御曹司。とはいえ、豊田社長の持ち株比率は0・1%。豊田家全体でも1%程度。創業家といってもオーナーではない。社長就任前から豊田社長は世襲批判にさらされてきた。
実際、就任当初は懐疑的な目で見られていた。米国でのリコール問題で公衆の面前で涙を見せたことから、“ひ弱”とも思われた。そのリーダーシップに対しての外部の声も、「ワンマン」で「独裁的」という声から「おみこし」「お飾り」といったものまで混在する。
経営者としての豊田社長の実像が世間一般から見えにくく、時に色眼鏡で見られてしまうのは、創業家である御曹司への先入観に加えて、彼の独特なスタイルにも起因する。
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