新日鉄・住金の憂鬱、合併直前に大赤字、中韓の増産攻勢で厳しい前途
実は、増産した中国メーカーも自らの首を絞める苦しい状況にある。中国の主要な企業が参加する中国鋼鉄工業協会の会員合計の当期純利益は前年同期比95%の減益。会員企業の3割が赤字に陥った。
こうした中で、日本のメーカーが期待するのは、中国の減産だ。「(量を絞るなど)値段を上げる方向に動かないと、鉄鋼産業そのものがおかしくなってしまう」と新日鉄の谷口進一副社長は話す。が、減産が実現するかは不透明だ。しかも、中国では広西自治区と広東省で巨大一貫製鉄所が相次ぎ着工しており、今後はさらに需給が悪化する不安を抱えている。
日本のメーカーが頭を抱えているのは輸出だけではない。おひざ元の国内では、需要が伸びない中で、高炉メーカーと電炉メーカーが入り乱れて価格競争を繰り広げている。電炉大手の東京製鉄が発表した7月契約価格では製品がすべて値下げされた。特に、ホットコイル(熱延鋼板)は前月より5000円安い1トン当たり5万5000円、H形鋼が8000円安い6万5000円と、高炉メーカーと競合する製品の値下げ幅が大きかった。
韓国製品が日本に流入
さらに新たな勢力が台頭している。ポスコ、現代製鉄などの韓国メーカーだ。韓国勢は品質が上がっているうえに、ウォン安によるコスト競争力を武器に日本での存在感を高めている。日本で流通する輸入材は増えており、そのうち7割を韓国製品が占める。
輸入材を扱う鉄鋼商社幹部は「韓国のポスコ、現代製鉄、東国製鋼が強力。足元は現代が攻勢をかけて、ポスコが巻き返している状況。日本では、東京製鉄の価格を意識した価格設定をしている」と説明する。東京製鉄の販売価格に対して、3000~5000円安い値段を提示しているというのだ。