郵政上場計画の裏側 民業圧迫もお構いなし
信用リスクの高い壁
それでは、百年戦争に決着がつくような日本郵政の勝利シナリオなのだろうか。
そんな答えは導き出せそうもない。新規事業を目指す個人ローンや事業ローンについて、机上では開拓の余地があると描ける。だが、実際には信用リスクという問題を前にすると、なかなか足を踏み出せないという現実の壁に突き当たる。それを突き破るには、審査体制の整備をはじめとして欠かせない課題が数多く残されている。それにもかかわらず、これら新規事業の開始は来年4月というのは「いかにも拙速」(メガバンク)だ。
来年4月は経営悪化した中小企業の救済策である中小企業金融円滑化法が廃止になるタイミングでもある。民間金融機関による中小企業の再生支援の腕前が本格的に試されることになる中、ゆうちょ銀行が掲げる「既存金融機関が融資しなかった先に融資する」という方針どおりに動き出せば、貸し倒れリスクが高まる。不良債権が山積みになって、「暗黙の政府保証」が国民負担に転嫁される懸念がある。
一方で、暗黙の政府保証のある有利な条件で住宅ローンなどの新規事業に参入すれば、金利が下がり、特に地方銀行や信用金庫など地域金融にとって死活問題となりかねない。
ゆうちょ銀行と個人ローンや事業ローンを長年扱ってきた既存金融機関のどちらがグッドバンクと位置づけされるのか。ゆうちょ銀行がすんなり事業を拡大するというわけにはいかないだろう。
(本誌:浪川 攻 =週刊東洋経済2012年11月10日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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