資生堂は株主総会でも「女性活躍」を強調した 魚谷社長のプレゼン術に株主も舌を巻く
また、2015年に話題となった「資生堂ショック」を意識してか、女性の活躍推進に関するコメントには熱がこもった。資生堂ショックとは、同社の働き方改革についた呼び名で、育児中の女性店頭販売員(美容部員)の活用に向けて、可能な限りで遅番や土日シフトに入るのを要請したことをNHK朝のニュースが取り上げたところ、ネット上で”資生堂が女性に厳しくなった”と、炎上した。
魚谷社長は、「この分野では、これまで先進的な企業だと言われてきたが、女性役員は3名、女性管理職比率も28%と、まだ満足できる数字ではない」「両立支援をさらにしていくために、私たち男性の意識も変えていかなくてはいけない」と、さらに踏み込んだ働き方改革の実施を宣言した。
総会を終えた株主からは、「魚谷社長の熱い想いはよく伝わった。壇上を歩き回って、大きな手振りで上手に話す。物静かなタイプだった前の社長(前田新造氏)とは随分違う」(60代女性)、「魚谷社長の顔を見るために3年ぶりに総会に参加した。『魚谷改革』の進捗に関しては、論点が多くて今イチよくわからなかったが、社長はこちらが引き込まれるような話し方で、好印象だ」(70代男性)と、魚谷社長のスピーチの上手さに舌を巻く声が多数だった。
社長の思いより定量的な情報を
株主との主な質疑応答は以下の通り。特に今回は「魚谷改革」の進捗を問う声が複数寄せられた。
――議長の思いを長々と述べているが、株主としては結果を求める。KPI(重要業績評価指標)をはじめとした定量的な情報の開示がないと、進行状況の把握ができない。
魚谷社長 戦略をなるべくわかりやすく話したつもりだが、来年以降は検討する。また、KPIの設定はしており、進行状況を確認しながら進めている。こういう場で、細かい数字を説明するのはふさわしくない、と判断した。2015年度は売上高、利益、シェアなど含め、目標をすべて上回ることができた。
――社長は以前の総会で、ROE(株主資本利益率)を12%まで高めるために(2015年12月期は6.0%)、自社株買いをすると言っていたように記憶するが(まだ実施がない)。グローバル展開していくうえでは、14~15%ないと見劣りするのではないか。
直川紀夫執行役員(CFO) 当社が最重要視するROE向上策は、(中期経営計画の目標である)2020年度に営業利益1000億円を達成するため、本業でしっかり稼いで営業利益を上げ、当期純利益を伸ばしていくことにある。また、総資産回転率を上げていくために、売上債権の回収や、在庫を圧縮しながら、売上高を上げていくことに取り組んでいきたい。こうした取り組みの結果として、2020年度のROE10%超えを実現し、海外企業と十分に戦える環境を作っていきたい。
魚谷社長 この2年間、海外投資家に対して、かなり積極的にIR活動を行ってきた。去年も40社以上回った。確かに、海外では日本企業の資本効率への関心が高いが、こと資生堂に関しては、営業利益率を話題にする投資家が多い。特に、かつては国内売上高が減少していたこともあるので、粗利率の高い化粧品事業でトップラインをどこまで伸ばせるのかが、優先的に要求されている。現在は、改革のために投資を優先させ、しっかりと還元できるようにしていく。
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