米高速鉄道、「トランプ政権」ならどうなる? ヒラリー、サンダースは積極推進派だが…

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まず、民主党の統一候補指名がほぼ確実視されるヒラリー・クリントン候補だが、内政についてはオバマ政権の路線を忠実に継承することに加えて、2750億ドル(約30兆5000億円)の公共投資によって、国内のインフラを更新するという政策を掲げている。

例えば3月上旬にフロリダで遊説を行った際には、フロリダ州における「タンパ=オーランド=マイアミ線」について、構想に消極的な共和党州政府を厳しく批判するなどしており、オバマ大統領の「高速鉄道構想」についても積極的に継承すると見て良いだろう。

ヒラリー候補の、民主党内の対抗馬であるバーニー・サンダース候補は、もっと明確に「高速鉄道」の拡充を公約として掲げている。「日本、ヨーロッパ、台湾、中国に遅れるな」という表現で、旅客と貨物の双方を時速320キロの高速で輸送する「鉄道網のアップグレード」を実現するというのだ。具体的な投資額も「75ビリオンドル(約8兆3000億円)」を鉄道に投入するとしている。

一方の共和党だが、基本的に主流派は「小さな政府論」であって、固定インフラ投資そのものである高速鉄道には消極的だ。例えば、現在予備選で2位につけているテッド・クルーズ上院議員、そして本選の会場で「トランプ降ろし」が成功した場合の受け皿として取り沙汰されているポール・ライアン下院議長の両名は「財政保守派」に属しており、高速鉄道には特に消極的だ。テッド・クルーズ議員はJR東海が熱心に売り込んでいるテキサス新幹線構想(ダラス=ヒューストン線)が出ている地元の出身だが、反対派に担がれるような動きも出てきている。

トランプなら高速鉄道は中国に?

では、現在「台風の目」となっているドナルド・トランプ候補はどうだろう?

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トランプ候補は中国での乗車経験を基に「高速鉄道はファンタスティック」と評している(写真:digifab/PIXTA)

トランプ候補は、一見すると右派の主張を取り入れているように見えるが、内政面に関しては高齢者福祉の充実を主張するなど、共和党の候補としては珍しく「大きな政府論」に近い。

社会インフラの整備にも積極的で、著書『機能不全に陥ったアメリカ』の中では「アジアの国々の高速鉄道と比較するとアメリカの鉄道インフラは途上国並み」と、現状を批判している。

では、新幹線の導入という点で期待が持てるかというと、気になる点もある。トランプ候補の著書によれば、彼がモデルとしている高速鉄道は、中国のもののようだ。中国での乗車経験を基に「高速鉄道はファンタスティック」だとしているのである。

何かにつけて、自分は「タフなネゴシエーター」だと自画自賛し、何でも「安く値切って買う」のが好きな「トランプ流ビジネス感覚」からすると、安全性や定時運行にコストをかける日本の新幹線カルチャーは、相性がいいとは言えなさそうだ。

白熱する大統領予備選だが、高速鉄道構想への積極度ということで言えば、「サンダース>ヒラリー>>トランプ>>>共和党主流派」という順番で、かなりクッキリとした違いが浮かび上がっている。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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