「アメリカ覇権」という信仰 E・トッド他著
2002年の『帝国以後』で「今後数年ないし数ヵ月間に、アメリカ合衆国に投資したヨーロッパとアジアの金融機関は大金を失うことになるだろう」と喝破したE・トッドの小論文をはじめ、内外の論客が金融危機と金融資本主義の将来を論じている。トッドの問題意識は、アメリカにとって残された「国力」はアメリカの覇権を信じたいという諸国の欲求だけであり、このような虚構性の上に存在するドルの崩壊は時間の問題だろう、と明快である。
執筆者(インタビューを含む)は加藤出、R・ボワイエ、松原隆一郎、水野和夫、佐伯啓思など14氏で、市場原理主義を一刀両断する榊原英資、浜矩子、辻井喬の各氏はじめ各人の問題意識はほぼ通底し、読み進んでいくうえで混乱はない。トッドも言うように、当面の指標に一喜一憂する「短期」の脅迫観念の慣習から脱し、「アメリカ覇権以後」へ向けての思索と行動を即刻進めていくためにも有効な書である。(純)
藤原書店 2310円
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