【産業天気図・百貨店】中堅・地方百貨店の一部は存廃の危機、コスト削減圧力一段と強まる
09年10月~10年3月 | 10年4月~9月 |
百貨店業界は前回(2009年6月)予想に引き続き、09年度後半、10年度前半とも「雨」が続きそうだ。昨年9月のリーマン・ショックから約1年が経過。この間、株価が上向くなど、逆資産効果は多少和らいでいる。だが頼みの富裕層はなお消費を手控えており、高額品などの好採算品はさほど上向いていない。
収益柱の衣料も「低価格でも高感度、高付加価値」を武器とする専門店の攻勢が続きそうで、急回復の望み薄。大不況が1年続き「発射台」が低くなったことで、業界全体では既存店マイナス幅はさすがに縮小に向かいそうだが、それは直ちに百貨店業界の復活を意味するわけではない。相対的に体力のある大手はまだしも、競争力のない中堅・地方百貨店の一部は存廃の危機を迎えつつある。
日本百貨店協会によると、09年7月の百貨店売上高は前年同月比で11・7%減。08年3月以来17カ月連続で前年割れ、6カ月連続で2ケタ減が続く。商品別に見ると、高額品(美術品・宝飾・貴金属)は29カ月、婦人服は25カ月連続で前年同月を割りこんでいる。
百貨店各社も苦境を乗り切ろうと必死だ。今秋冬からは、そごう・西武が従来比で約4割安いPB(プライベートブランド)を発売するなど、各社は「百貨店品質」を維持しつつ、価格を引き下げた商品を相次いで投入し、顧客増をもくろむ。だが今夏に引き続き、冬のボーナスも前期比で大幅減少が確実。競争激化の中、各社が業績を回復させるのは容易ではない。
売り上げが上がらない中、コスト削減圧力は強まる一方だ。最大手の三越伊勢丹ホールディングス<3099>では今期赤字が予想される傘下の三越で、人員削減に乗り出す。従来の「セカンドライフ支援制度」を拡充した削減策だが、業績が上向かなければ希望退職の実施もありうる。
一方で、高コスト体質脱却を図る動きも本格化。この11月に開店するJ.フロントリテイリング<3086>傘下の大丸・心斎橋店北館(そごうから譲り受け)では、隣接する本館や南館との一体運営をすることで正社員の増員はゼロ。ローコスト運営を加速化させ生き残りを図る。
(福井 純)
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