(第8回)<室井佑月さん・後編>学校が子どもの心の問題までケアできるわけがない!

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●親のすべきこと、教師のすべきこと

 子どものことは、はっきり言って分からない。たとえば、兄弟でお兄ちゃんと弟はまともなのに、真ん中の子だけ人殺しになっちゃったりするし、「殺したい」と思う気持ちと本気で殺しちゃったり、犯罪を犯してしまったり……物を盗んででも欲しいと思う気持ちと、本気で盗むのとは違う。壁がある。そこをたやすく乗り越えちゃうヤツというのは、お母さんのお腹の中に何か大切なものを忘れて生まれてきた可哀想な子なんだよ。
 それでも、他人に、「お前のところの息子は人間として何かが欠けて生まれてきた」なんて言われたらムカつく。だから親が一番、自分の子どもを疑いの目で見なくちゃいけない。親の自分が死んでも子どもは生きて行かなきゃいけないんだから、ちょっと頭が悪いとかトロイとか思ったら、そうしたらリーダーにはなれなくても、みんなから、周りから愛される人間として教育するべきだし、すごく残酷な気持ちが多かったり、衝動が抑えられなかったり、攻撃本能が強かったり、自制心が足りないような子どもだったら、早い時期からカウンセリングとかに行かせたりするべき。まず子どものために親が疑わなきゃと思うよね。
 それでもし、人殺しとかしちゃったら、そうしたらもうそれは親だから、対外的には「うちの子が申し訳ありませんでした」って言って一緒に死ぬくらいのことはするけど、我が子に対しては、世の中の全員が敵でも、「何言ってんだ!殺されるほどの問題があったんじゃないか」という風に思うのも親な訳じゃん。間違いを犯してしまった後にかばうのも、事前に一番疑うのも親の役目だと思うんだよね。

●もし、教師になったら…

 もし、私が先生になったとしたら?それはもう、決まった授業をサクッとその時間だけやって帰ってくる。学級で何かあったら、マニュアル通りに対処して全部報告!先生とかみんな隠すじゃない?だけど私の場合は全部親に報告して「私には出来ません」と言って親にも頼る(笑)。たとえば、一応「こういうことがあり、喧嘩になったから止めた。クラスの中で怪我とかされると私は困る。息子さんにも、カッとなってすぐに人とかを殴ったりしないように、家でしつけてください」と言いますね。あと、誰だれ君と殴りあったので、お互いに親同士で話し合ってくださいって言う。  今の親もヘンで、先生も可哀想だと思うよ。学校や先生にいろいろと望み過ぎだよね。学力低下とかも、先生や学校のせいにするのはおかしいだろうと思う。
  私は学校の先生には勉強以外のことはあまり教えてもらいたくないんだよね。余計なことを言うことがあるでしょう?道徳というのは、家庭で教えるもの。学校って、教え方がキレイ事だから、余計汚くなっちゃう。一番大事なところである汚いことを隠して、それをないこととして話すから、だから余計汚い大人が出来上がっちゃうんだと思うのね。  だから先生は、学校で何が起こったかを教えて欲しい。全部報告するということでいいと思う。学校を責めるとしたら、何か隠し事をしていたりするとき。もっと早く教えてくれたら、早い時期に対処できたのにどういうことだって怒ったりはするだろうけど、先生の給料なんかたかが知れてるのだから、子どもの心の問題までケアできるわけないだろう!って思うよね。
(取材:田畑則子 撮影:戸澤裕司

室井佑月<むろい・ゆづき>
1970年、青森県出身。
ミス栃木、モデル、女優、レースクイーン、銀座のクラブホステスなどを経て、作家になる。
著書に、『熱帯植物園』、『血い花(あかいはな)』、『piss』、『プチ美人とお金』、『ああ~ん、あんあん』、『子作り爆裂伝』『ママの神様』などある。テレビ、ラジオ、シンポジウムなどでも活躍中

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