水ビジネスを深耕へ、沸き立つ総合商社
大手総合商社が「水」のインフラ事業拡大に走っている。
豪州第2の都市、ビクトリア州メルボルン。伊藤忠商事は8月、政府が進める海水淡水化プロジェクトへの参加を発表した。2011年末までに巨大な海水淡水化プラントを建設し、27年間にわたって日量40万トンの生活用水をメルボルン市へ供給する。関連設備を含めた総事業費は2800億円に上り、世界でも有数の大規模プロジェクトだ。
事業主体は、水・環境分野の世界有力企業である仏スエズグループと豪州の有力ゼネコン、豪大手投資銀行の3社。伊藤忠は欧米年金ファンドなどと並んで出資パートナーとして名を連ね、事業プロジェクト会社に1億豪ドル(約80億円)を出資。役員派遣も予定しているという。
一方、丸紅では7月末、南米ペルーで浄水場事業を展開するCAA社の株式約3割をファンドから取得し、同社の筆頭株主となった。CAA社は、ペルー初の水事業民活案件を担う事業会社として00年に設立された会社で、リマ北部の人口80万人を対象に浄水場設備の運営・管理を手掛けている。これに先立ち、同じ南米のチリでは、同国初の完全民間水道事業者(アグアスデシマ社)を06年に買収。同社を通じて、チリ南部で上下水処理から料金徴収に至るフルサービスを展開している。
今回のCAA社出資により事業エリアを広げた格好で、「南米大陸での水事業拡大に拍車をかけたい」(電力・インフラ部門長の山添茂・常務執行役員)と鼻息は荒い。
世界的に有望な水市場 主導権の獲得がカギ
総合商社が水事業へ経営資源を振り向けるのには理由がある。