海運業界、「用船料はピーク時の1%」の悪夢 商船三井は赤字転落、リストラ後も視界不良

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老朽船の処分は増えているものの、需給の改善が期待されるのは2017年ごろだ。さらに業界では、鉄鉱石輸送の世界需要自体が2019年にピークアウトするという、“悪夢のシナリオ"がささやかれる。

中国では成長鈍化が続く中、鉄スクラップの再利用率が上昇し、鉄鉱石輸入量は減少に転じる。世界ではインドの粗鋼生産量が増えるが、同国は鉄鉱石の産出国でもあり、海上輸送は増えない。

破綻した第一中央汽船・薬師寺正和社長の「バラ積み船は構造不況に陥った」という言葉が重みを増している。

海運大手各社はリストラを急ぐ

日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手3社は、バラ積み船の多くで、鉄鋼メーカーなどの荷主と5~10年の中長期契約を結んでいる。そのため市況に直撃はされないが、契約更新ごとに体力は奪われる。

追い込まれた日本勢の姿を象徴するのが商船三井だ。同社は、市況上昇を先取りして船隊を増強する“積極経営”で、リーマンショック前には業界首位の利益をたたき出した。しかし2016年3月期には、リーマン前の牽引力だった短期契約のフリー船で、中小型船から撤退。大型船でも大幅縮小を決めた。

川崎汽船の場合、ケープサイズの中長期契約比率を9割まで高めることで36年間バラ積み船の黒字を守ってきたが、ついに赤字へ転落。フリー船をさらに圧縮する。

日本郵船は航空・物流事業を育成してきた分、傷は浅いものの、バラ積み船は同様に赤字転落が濃厚だ。12月に会社更生手続き入りしたUOGは、全船隊を日本郵船へ貸し出していた。契約は維持される見込みで、日本郵船が損失を被ることはなかったが、船隊にはドル箱である自動車船も含まれ、継続使用に障害が生じるおそれもあった。自社船を減らしてリスクを軽減するオフバランス経営に潜む危うさを露呈した。

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