ベーシック・インカムの哲学 すべての人にリアルな自由を フィリップ・ヴァン・パリース著/後藤玲子、齊藤拓訳~働く人にも働かない人にも「基本所得」の導入を提唱

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 むろん、働かない人に基本所得を与えることには、抵抗があるだろう。働かずにサーフィンをする人に、なぜ国家はおカネを配分すべきなのか。にわかに納得することはできない。

けれども著者のねらいは、現行の政策を見直すことにあるようだ。いまの政府は、人々の生活を監視しすぎていないか。配慮しすぎていないか。基本所得だけを保障すれば、その必要はない。恩着せがましい政府介入を避ければ、人々も生き生きとして、経済も活性化する。そういう希望が本書を貫いている。

とりわけ本書が面白いのは、従来の左派を徹底的に批判して、資本主義を擁護する点だろう。搾取論や市場批判論など、左派の主張がどこで誤ったのかを総点検する。その執念深い努力には、ひたすら脱帽である。

Parijs Philippe Van
ベルギーのルーヴァン・カトリック大学経済・社会・政治学部教授。ハーバード大学哲学科客員教授。BIEN国際委員会座長。1951年ベルギー・ブリュッセル生まれ。

勁草書房 6300円 494ページ

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