住友金属鉱山、銅で巨額の減損と投資のナゾ 銅と金の絶妙なバランス
提携相手のKGHMは共産党政権下で生まれた国営企業。意思疎通も円滑とは言えなかった。緒方幹信専務は「われわれは沈黙の株主だった。これからは現地マネジメントに関与していく」と言う。
今回の減損で簿価は半減したが、それでも2016年はまだ赤字。どころか、今回の減損は市況が5000~7000ドルのレンジに戻ることを前提にしており、市況低迷が長引けば、再減損を迫られる懸念さえある。
すべてを一から積み上げていかねばならない新山の難しさだ。
ピンチをチャンスにかえて
一方、追加投資を決定したモレンシー銅山はシェラゴルダの対極にある。住友金属鉱山が出資したのは30年前の1986年。本格的な海外投資の嚆矢であり、隅から隅まで知り尽くした山だ。昨年の大拡張を経て、確立した年産48万トンの能力は世界で5指に入る。米国アリゾナ州に立地するモレンシーは、カントリーリスクの心配もない。
何より、そのコスト競争力、収益性の高さである。
「今の市況でもしっかり利益が出る。生産性は世界の銅山で上位3分の1以内。ここが赤字なら、3分の2の山が潰れる」。今回の追加投資で住友金属鉱山の持ち分は12%から25%に上昇し、相手の資源メジャー、フリーポートの持ち分は85%から72%に低下する。
フリーポートが"お宝"を切り売りしたのは、畑違いの石油・ガスに大枚200億ドル注ぎ込んで財務が破綻し、資金繰りに行き詰ったからだ。買い手の住友金属鉱山は同じ時期、シェラゴルダやフィリピンのニッケル精錬に投資しながらも、自己資本比率60%超を維持。財務バランスを崩さなかった。
かねて中里佳明社長は言っていた。「(市況悪化で)資源メジャーが権益を売ろうとしている。われわれにはチャンス」。"お宝"の持ち分拡大によってシェラゴルダの赤字を吸収し、市況回復を待つ時間が稼げるのだ。
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