(第24回)<前園真聖さん・後編>子どもとサッカーをするのが幸せ

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●体育会的「説教」と、いじめは違う

 小学校は一クラス、中学校は二クラスありました。いじめというかどうかわかりませんが、僕らの頃は「説教」と言われていたものがありました。でも、いじめとは違うかな?
 よくあったのは、たとえば、誰かが挨拶をできないと連帯責任で全員が罰を受けるのです。腕立て伏せ100回とか、全員でやらされました。スポーツの社会なので必ずそういうのはありましたけど、今聞くようないじめの陰険な感じではないですね。
 「説教」というのは、先輩から後輩に、正座させられて一時間くらい話を聞かされたりということです。足がもう、しびれてね……。これもまた、いじめとはちょっと違いますよね。

 今の高校はどうなのか。まだ、あるところはあるんじゃないかと思います。伝統校ではそういうものがたいてい受け継がれていくものなので(笑)。
 こういうことも、場合によっては必要だと思います。たとえば、僕らの頃は何かをすると一人じゃなく、連帯責任でした。それが逆に仲間との意識を高めていったという気もします。一人じゃなくてみんなでやらなくちゃだめだぞ、と。
 それから、僕が小学生の頃は、試合に負けたら監督にぶっとばされていましたからね。親もそれが普通というか……「そんなんで泣きなさんな」と言われていましたからね(笑)。その悔しさがバネになっている部分もあった。鼻血を出しながら後半の試合をしていたこともありました。鼻にティッシュを詰めながら……(笑)。今なら大問題かもしれない。ビンタなんかしたら、もう、やばいんでしょうね。

●今後のサッカー人生は?

 今のところ、自分が監督をやるということは思ってもいないし、イメージがわいてきません。僕の場合、サッカーの楽しさを実感し、興味を持ち始めたのは、小学校のときだったと思うのです。だから、今の小学生にも、そうした自分の経験を元に伝えていきたいという思いはすごく強いです。まずは、自分ができることという意味でスクールを始めました。それを今やっていて楽しいし、自分の原点と同じところからサッカーを子ども達に教えられてすごく幸せです。今後、たとえば高校の監督やJリーグの監督をやりたいと思うようになるのかどうか、それはわからない。けれど、今は子ども達とサッカーをするのが楽しいです。

●熱血教師がどんどん増えて欲しい

 もし僕が先生になったら? そうですね、子ども達と話をいっぱいしたいです。それも本音で。基本的な挨拶とか礼儀みたいなことはきちんとやらせたいし、あとは楽しく子ども達と過ごすけど、やっぱり怒るところは厳しく、とにかく本音で向き合いたいと思いますね。
 実際に、今、サッカースクールでもそうしています。挨拶しないやつは怒るし、返事をしないやつや話を聞いていないやつのことも怒る。そのうち、子どもはだんだん変わっていくと僕は実感しています。僕がそこで何も言わなかったり、そのまま流していると何も変わらないだろうと思います。だから、思ったことはどんどん言っています。
 面と向かって話をする。目を見て話をすれば伝わる部分も出て来るし、なるべくこっちが本音で心を開いていかないと、なかなか子どもから歩みよるというのは難しいと思うのです。そういうのは僕も経験したことなので。

 これからの学校現場で、熱くぶつかっていくような先生がもっとたくさんいてもいいんじゃないか、と思います。僕らの子どもの頃はそういう先生が多かった。親身になってくれるのが子どもながらに伝わってきたもので、だから、「ああ、悪いことをしたな」「先生に迷惑かけたな」という風に思うことがあった。今は、なんとなく当たり障りのないように接したりしている。昔と違って、周りの環境も違えば、親も違うのかもしれないけれど。もっともっと「熱い教師」が増えて欲しいとは思います。

  これから、JFAこころのプロジェクトで小学校を回っていく予定ですが、できれば、離島とか、生徒が10人いないようなところでやりたいと思っているんです。関東近辺もよいのですが、この辺ならば、スポーツを間近にみられたり、いろんな機会があると思うので、むしろ人が誰もいないようなところで夢の授業をしていきたいですね。
(取材:田畑則子 撮影:戸澤裕司

前園真聖<まえぞの・まさきよ>
1973年生まれ。鹿児島県出身。
1992年鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。アトランタオリンピックを目指すU-21でキャプテンを務め、28年ぶりにオリンピックへ出場。ブラジルを破り注目を集める。1997年ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ1969)に移籍。ブラジル全国リーグ1部サントスFC。ゴイアスECにレンタル移籍。その後、2000年J2湘南ベルマーレで国内リーグに復帰。翌年東京ヴェルディ1969に戻る。03年K(韓国)リーグの安養LGチータースに移籍。2005年引退。
現在は解説者として活躍するほか、少年サッカースクールなど展開。JFAのこころのプロジェクトでは、全国の小学校で「夢の授業」を開催。
公式サイト http://www.zono.net/
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