アマゾン、最強「買い物帝国」の知られざる姿 巨大な物流網は日系メーカーをも取り込む

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
2000年の日本進出当初からトップを務めるアマゾン ジャパンのジャスパー・チャン社長。日本での労働組合結成には「これまでオープンな環境を構築できてない面があった」と認めた(撮影:今井 康一)

最近では最短1時間で商品が届く「プライム・ナウ」や写真を無制限に保存できる「プライム・フォト」がラインナップに加わるなど“食べ放題”の中身は充実してきている。

こうして利便性を高めてきた結果、アマゾン・プライムの登録会員数は2015年度にグローバルで前年比51%の伸びを示した。実数は公表していないが、「中でも日本の伸び率が最も高かった」(アマゾン ジャパンのジャスパー・チャン社長)という。現在、日本のプライム会員数は600万人とみられ、伸びしろはまだありそうだ。

巨額投資を支える黒子役「AWS」

1997年の米ナスダック上場のときから短期的な利益を追わないことを宣言しているアマゾンから見れば、プライムもまずは顧客を囲い込む出血覚悟の戦略といえる。とはいえ、アマゾン自体がまったく稼いでいないわけではない。利益面でじわりと存在感を出しているのが、クラウドサービスの「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」だ。

AWSは2015年1~3月期から初めて個別の業績を開示し、収益性の高さに投資家を驚かせた。2015年7月に発表した4~6月期の決算ではAWSの急成長ぶりが著しいことから、その直後に米小売り最大手ウォルマートの時価総額を抜いたほどだ。

画像を拡大
週刊東洋経済3月5日号の中吊り広告です。画像をクリックすると拡大します

2015年度通期におけるAWSの業績は売上高78.8億ドル(8825億円)、営業利益18.63億ドル(2086億円)だった。営業利益率は23%で、全体に占める売り上げはわずか7%ながら営業利益は同41%に上る(営業利益は株式報酬支給前ベース)。小売り事業の巨額投資を支える“黒子役”として活躍を見せている。

AWSが急成長している理由についてヴァーナー・ボーガス米本社最高技術責任者は「規模を拡大することでデータセンターのコストを削減し、値下げによって顧客に還元するという古いタイプのIT企業にはできないことをやってきた」と解説する。ベゾスCEOは将来的に、AWSが小売り事業と同規模の売り上げになると期待をかけているとも言われる。

本誌推定によれば、アマゾンは現在少なくとも20億の品目、年間合計で40億個の荷物を取り扱う。

品目数はアマゾン ジャパンの日本市場における公表値「2億」を基に、全体売り上げのうち日本法人が占める比率(約1兆円、1割弱)から算出した。荷物の個数は「アマゾンがヤマト運輸に配送を委託している比率はヤマト全体が年間で取り扱う宅急便16億個強の15%(=2.5億個)、これはアマゾンが年間で扱う荷物の65%に相当する」(通販物流代行会社イー・ロジットの角井亮一CEO)との試算に基づく。

次ページ明らかになるアマゾンの実態
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事