アマゾン、最強「買い物帝国」の知られざる姿 巨大な物流網は日系メーカーをも取り込む

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つまり、日本でアマゾンが取り扱う荷物は「4億個」。同じく日本法人の売り上げ比率から求めれば、世界で取り扱う荷物は40億個という計算になる。本件についてアマゾン米本社からは回答を得られず、アマゾン ジャパン広報部は「特にコメントはない」と回答している。

一方で、不名誉な記録もある。国際労働組合総連合(ITUC)は2014年5月、物流センターの従業員が1日当たり24キロメートル歩行していると発表した。2015年8月に米ニューヨーク・タイムズがアマゾン社員の証言を基に過酷な労働現場について報じるなど、急激な成長によるアマゾン社内における負の面が明らかになりつつある。2015年11月には、日本でもアマゾンの労働組合が結成された。

隆盛を誇るアマゾン ジャパン

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物流のさらなる進化に向け、ドローンの実用化も模索。日本政府が国家戦略特区に指定した千葉県千葉市で初めて実現する可能性がある

今回の取材では、アマゾン ジャパンに在籍する正社員が2015年末時点で3500名ということも判明した。「半年間の中途採用ペースは500名規模」(同社社員)とされ、東京都目黒区のオフィスでは「もはや手狭」(別の社員)という声もある。

グローバルで見て成長著しい日本市場において、勢いを示す象徴的存在が物流センターだ。2013年9月から稼働した延べ床面積約20万平方メートルを誇る神奈川県小田原市の物流センターは、世界で50を超える物流センターの中でも最大級ということから当時大きな話題を呼んだ。

しかし物流関係者らの間でアマゾンは最近、「神奈川県川崎市高津区で小田原と同等かそれを上回るサイズの物流センターを建設している」との情報が飛び交っている。くしくもこの高津区は、楽天が新しく本社を置いた東京・二子玉川駅の目と鼻の先。楽天は物流事業から「事実上撤退」(同社OB)し、主力のEC事業「楽天市場」の実態を示す取扱高を非公表にするなど勢いに陰りが見え始めているさなかだ。

あらゆる商品を取り扱い、さまざまな業種の競合を飲み込んでいく(撮影:梅谷 秀司)

大手の日系メーカーもアマゾンのほうを向き始めた。化粧品を除くすべての1500商品を展開する花王は「一つのメディアとしてリアル店舗以上に客にブランド価値を伝達できる。ほかのECサイトと比べ安心・安全という印象がある」(チェーンストア部門Eコマース部の武子弘司部長)と、アマゾンならではの強みを挙げる。

巨大な物流網を武器にメーカーをも取り込むアマゾン。巨大な買い物帝国は競合たちをあざ笑うかのように、ここ日本でも強固な経済圏を築き上げようとしている。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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