「商売下手な人」が理解していない欲望の本質 ヒット商品は理屈で生まれるものじゃない

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常見:いや、高橋さんもすごいです(笑)。

高橋:評判もあるんでしょうけど、定額制スタイルに生活者も慣れてきているのも、人気になった理由のひとつと思います。

たいていの「知育」は、エゴである

「∞(無限)プチプチ」シリーズなど、多くのヒット商品を生み出している高橋晋平氏

常見:次は「本能寺の変」ですね。

高橋:エグスプロージョンという芸人がやっているお笑いネタで、YouTubeなどで人気になっていますね。踊りとリズムネタをやりながら、織田信長の本能寺の変について、「そういうことだったのか!」とわかる。これも僕は「やられた」と思いました。

教育を楽しんでやろうというのは、昔からいろんな人が模索してきたはずで、僕もおもちゃを作りながら、ずっと探っていたんです。勉強って好きだけど嫌いって感情ありませんか? それを、たとえばゲームをしながら英語を覚えられたりとか、知らなかった漢字をどんどん学べたりする遊びを作れるんじゃないか、と思ってきました。

常見:はい。これってずっと模索されていますよね。

高橋:でもあるときに、遊びながら学べるという考え方が完全に間違っていると気づいたんです。遊びは100%遊びじゃないとダメなんです。すごいハマって、もうやめられないとなって、その副産物で勝手に覚えるというふうにならないと。

「本能寺の変」は100%お笑いネタなんです。僕は地元である秋田の中高一貫校で講演をしたことがあったんですが、「エクスプロージョンの『本能寺の変』っていうネタが流行っているんだけど、知ってる人?」って聞いたら、体育館にいる中1から高3までの全員が手を挙げて、びっくりしました。

僕の地元は相当な田舎で、電波も3Gなのに、全員知っているのかと。みんな、本能寺の変は明智光秀はこうでこうだから復讐したと知っちゃったわけです。完全にこれは、やりたかったことをやられたと。

常見:これ、大事な教訓ですね。「知育を押し付けちゃダメ」という。やっぱりニーズの押し付けっていけないですなあ。

高橋:最後に「スプラトゥーン」です。みなさんご存知ですか?

石川:僕は、今日の資料で見て調べました。

常見:僕もタイトルだけ知っていて。そういえば、駅で看板を見かけましたね。

高橋:これは任天堂の家庭用ゲーム機「Wii U」専用のソフトです。2つの色の軍に分かれてオンライン対戦ができるんですが、遊び方としてはプレーヤーが銃やバケツ、ローラーのような形状をした武器を使って、ペンキをフィールドに塗り合うんです。ローラーなら転がして、銃は水鉄砲みたいに撃って、バケツはぶちまけて。簡単に言うと制限時間が終わったときに、多く面積を塗っているほうが勝ち。基本はそれだけなんです。

任天堂の大人気ゲームソフト「スプラトゥーン」(撮影:今井康一)

このスプラトゥーンが大ヒットしていて、国内だけでも累計100万本を軽く超えて売れているそうです。Wii Uはハードとして苦戦が続いていましたが、スプラトゥーンのおかげで盛り返した。スプラトゥーンの新しいニュースがあるたびに、Twitterのトレンドで毎回1位になったりする。

常見:すごい。

高橋:面白ければ売れるんだと。単純ですが、勇気づけられたというか。この環境下、この時代でこんなのが出るかと。

人間の欲望に忠実な「スプラトゥーン」

常見:Wii Uにはあまり魅力がないと感じていた方は多かったようですが、それを買わせるってすごいですね。

石川:人間の根本的欲求があるんでしょうかね。

高橋:ぶちまけたいんでしょうね。僕もまだ何度かしかやっていないんですけど、気持ちいいんですよ。通常のシューティングゲームは、銃で撃つとなると、当たらないといけないんですが、このゲームは、走りながら床に撃ちまくるだけでも勝利に貢献できるんです。でも「シューティングゲーム」って堂々と名乗っているんですよ。

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