東京メトロ-最強”私鉄”が上場したら、株価はいくら?《鉄道進化論》

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東京メトロ-最強”私鉄”が上場したら、株価はいくら?《鉄道進化論》

東京メトロのニックネームで親しまれる東京地下鉄。2009年3月期の売上高は連結ベースで3813億円、営業利益875億円(売上高比22・9%)の高収益企業である。鉄道部門の売上高や営業利益額はJR3社に次ぎ、利益率は東海道新幹線で稼ぐJR東海に匹敵するトップ水準だ。

現在の路線延長は195・1キロメートル(営業キロ)で、JRを除けば民間鉄道会社で五指に入る。所有する9路線の大宗がJR山手線の内側で緻密な乗り換えネットワークを築いており、1キロ平均の旅客輸送人員や旅客収入も民鉄では首位級だ。

格付投資情報センター(R&I)の格付けは「AA」。JR東日本のAA+に劣後するものの、JR東海・西日本と同格だ。「人口集中が続く都心部に基盤を持つ経営の安定性を評価している。キャッシュフロー対比の負債も多くなく、鉄道会社ではトップグループだ」(山本由明・R&Iチーフアナリスト)。

ただし、まだ株式は未上場だ。特殊法人である帝都高速度交通営団(営団地下鉄)がその前身であるためで、行政改革により将来の完全民営化が決まり、04年4月に東京地下鉄株式会社が発足、中期計画で今年度までの上場を目指している。

営団時代は駅構内の売店と中吊りや駅での広告収入を除く兼業が禁止されていたこともあり、まだ売り上げのほとんどが鉄道事業。上場会社ではJR3社に近い事業構造だ。

東京メトロ発足後は関連事業の積極化が可能になったため、地下商業施設「エチカ」の展開を加速しているが、JRのルミネや電鉄系百貨店、あるいは各社の不動産開発事業に比べれば比率は小さい。これは東京メトロの自社保有不動産が基本的に地下空間だけで、圧倒的に遊休面積が狭いこと、それも都心部の道路下のため、飲食・商業施設への転用が容易でないことが原因だ。

上場大手並みPBRなら妥当株価は1050円

1927(昭和2)年12月30日、早川徳次氏らの立ち上げた東京地下鉄道が浅草-上野間で日本初の地下鉄営業を開始。現在の銀座線であり、同社は新橋まで延伸した後、渋谷から掘り進んできた五島慶太氏(後の東急グループ創設者)の東京高速鉄道と経営権争奪戦の末、統合した。

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