公立躍進校ルポ-大阪府立 大手前高校、東京の生活情報も与え、地元志向を見直させる《本当に強い中高一貫校》
同校には普通科と理数科があり、難関大学への進学は理数科の生徒が中心となっている。各生徒に大学の学部・学科を調べさせたら、次は理数科・普通科ともに「体験学習」を用意する。同窓会にも協力を仰ぎ、あらゆる職業に就いたOBを招いて、その仕事ぶりを紹介してもらう。特に理数科については、京大在学中のOBも協力し、実際の大学の講義を受講する機会も設けていく。
こうした仕掛けの持つ意味について野口先生は、「どの学部へ行きたいかわかると、自然とよい大学に行きたくなるもの」と説明する。
学びたいことがはっきりすれば、どの大学のどの学部にどういう実績のある先生がいて、研究費や補助金の多いところはどこか、ということがわかってくる。生徒にも自然に、「研究費などの多い東大や京大に行けば、充実した勉強ができる」という動機づけができる。同校ではさらに、東京での生活費がいくらかかるのかといった、生活面での情報も提供。関西以外での生活に対する不安感を解消させ、落ち着いて受験勉強に取り組ませるためだ。
こうした一連の仕掛けは、進学志望先に対するはっきりとした動機づけこそが、学力向上へのインセンティブになることを証明している。
仕掛けの対象は今いる生徒たちにとどまらない。同校では中学生に加え、小学生をも対象に学校見学会を開催している。小学生まで対象を広げたのは私立対策にほかならない。
首都圏ほどではないが、関西圏でも私立中高一貫校が勢力を伸ばしているからだ。「親の関心をどう公立高校に向かせるか。それには授業参観など積極的なアピールが必要」(野口先生)。実際には小学生の見学会参加はまだ少ないが、今後は取り組みを強化していくつもりだ。
(週刊東洋経済)
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