ヘイトスピーチ対策は「新条例」で変わるのか 「表現の自由」との関係にはどう配慮した?

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ヘイトスピーチについては、表現の自由との関係で、規制の可否が永らく議論されてきました。今回の大阪市の条例は、議論の膠着状態を打ち破って『とにかくやれることをやってみよう』と一歩を踏み出した点で、非常に意味のあるものだと思っています。

大阪市の条例は、 ヘイトスピーチの要件を『社会からの排除等といった目的性』、『侮蔑・誹謗中傷といった態様面』、『不特定多数の者が表現内容を知り得るといった対象者の不特定性』などと厳しく限定しています。

「規制対象」と宣言することに意味がある

また、認定にあたって学識経験者の意見を聞くことにする等、手続き的にも慎重にしていることが、この条例の特徴だといえます。

これらは、表現の自由にも十分に配慮したものといえるでしょう。

条例が定めるヘイトスピーチの要件が限定的なものであったとしても、この条例は、ヘイトスピーチの根絶を願う立場から十分に評価できるものです。なにより『ヘイトスピーチは違法であり、これを規制できるのだ』ということを公に宣言すること自体、非常に画期的であり、インパクトがあることだからです。

このように、ヘイトスピーチについては、まず自治体で規制の実績を作っていき、最終的には、国の法律で全国的な規制を定めていく、という方向がよいかもしれません。

神原 元(かんばら・はじめ)弁護士
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、2000年に弁護士登録、2010年武蔵小杉合同法律事務所開所。2013年3月にはジャーナリスト・有田芳生氏とともに東京都公安委員会に在特会のデモに関する申し入れを行った。
事務所名:武蔵小杉合同法律事務所

 

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