これは、ぷちぷちと潰したくなることでお馴染みの気泡入り緩衝材、プチプチを製造・販売している川上産業株式会社の野立て看板だ。
気泡入り緩衝材では約50%のシェアを誇り、「プチプチ」も同社の登録商標だ。潰すための専用プチプチやハート型のプチプチなど、ユニークな商品を販売していることでも知られる。
川上産業が「プチプチ看板」を東海道新幹線沿線に設置したのは、2001年のこと。同社の杉山彩香常務取締役によれば、社長が新幹線の車窓から野立て看板を見て、「日本で唯一の看板を、一カ所だけ立てたら面白い」と思いついたという。だが、問題はその内容だった。
「当時はダイオキシンが社会問題となっていたので、”プチプチはダイオキシンを出しません”と書こうとしました。でも、一瞬で通り過ぎる新幹線の車内から見ると、”プチプチ”、”ダイオキシン”という文字だけ印象に残って、逆効果になる恐れがありました」(杉山氏)
そこで、メインコピーは「プチプチはあれを出しません」とし、その下に小さく「あれとはダイオキシンのことです」と書き添えた。デザインは、杉山氏がイメージを説明するために10分程度で作ったワープロのデータがそのまま採用された。看板があまりにも手軽に作れることに驚いたという。
シンプルな言葉が謎を呼ぶ
設置場所は、いくつかの候補地から平塚市内の山側(E席側)を選択。新幹線から見える時間が長いということが決めてとなった。
しかし、「のぞみ」は平塚市内を時速240km前後で通過する。新幹線の車内からでは、そのQ&Aもなかなか読み取ってはもらえず、2007年からはシンプルに「プチプチ」とだけ書いたデザインに変更された。
新幹線の車窓から、プチプチ看板を見た人は、「あれは何だろう」とネットを検索する。その結果、川上産業のウェブサイトに行き着くというわけだ。
現在の看板は、2013年に設置された3代目だ。平塚市の規制強化によって隣町の海側(A席側)に移動し、同時にデザインも一新した。新しい看板は、「プチプチが有害物質を出さず、リサイクルされていく様子をデザイン化」(杉山氏)。そのコンセプトが新幹線の乗客に正しく伝わっているかは甚だ疑問であるが、山の中という立地もあって「謎の看板度」が大幅に増した。
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