31歳外銀エリートの恋愛観は自信たっぷり

東京の「婚活事情」最前線<2>

「ちょっと仕事が忙しいよ。最近はどこもクビ切ってるし、社内もピリピリしてるからね」

それだけではない。前回聡と会った直後、美優は突然別れを告げ彼の前からパッタリと姿を消した。

「連絡はとってない。僕からはとらないよ。彼女の選んだ道だから。考えは変わってない。むしろ強くなったよ。世間の風潮や一時の感情で人生の決断をしてワークライフバランスを崩すなんて、合理的とは思えない。彼女が幸せになればいいと思ってるよ。」

出されたコーヒーを睨めつけるように語る。自分自身に言い聞かせているのだろうか。いつもの温和な笑顔は出ない。

聡にとって、美優は「釣った魚」でしかなかった

「美優、結婚するよ。子供ができたって。幸せになったよ。」

一瞬、目が見開いた。少し震えたようにも見える。

言葉が出ないようだ。その事実をたった今知ったのだ。動揺を隠す事ができない。

「…………」

結局、美優を見くびっていたのだ。一般的に男がそうであるように、聡にとって美優は釣った魚だった。

ぜいたくなデートも旅行もオフィシャルな関係も誠実なものではあったが、それはあくまで自分の理想の恋人関係であり、彼女のためのものではない。トレーダーらしい合理的な思想を自分にとって最善だと考え、2年付き合った美優の立場や感情に寄り添い将来にコミットすることはしなかった。

しかし美優はもともと美しく賢く、そして強い女だった。

恋人として完璧ではあるが、女にとっての2年という時間の重みを考えようとしない聡への気持ちに、彼女は静かに、ゆっくりと時間をかけて、一人で折り合いをつけていたのだ。

彼女に必要だったのは自慢できる恋人ではなく、自分の人生を受け入れ一緒に歩んでくれる男だった。聡と別れた後、以前からアプローチをかけられていた会社の先輩に結婚を前提に交際を申し込まれ、そしてすぐに身ごもったのだ。

「……それはよかったよ」

聡はやっと一言発したものの、瞳は不安気に揺れ、いつものようにうまく笑えていない。

1人決心をし突然姿を消した美優に対して、聡はまだ彼女が完全に自分の手を離れたとは思っていなかった。最高のスペックを持つ自分に振り落とされた女だと、優位に思っていた。

次ページ昇進し、年収もさらに増えたが…
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