日本テレビの社長引責辞任会見、”異常”な取材規制で非難集中
3月16日に久保伸太郎社長の辞任を発表した日本テレビ放送網。昨年11月放送の報道番組「真相報道バンキシャ!」が虚偽の証言に基づいて岐阜県に裏金があると報道した問題を重く受け止め、本人が辞任を申し出た。
異常だったのは発表後の対応だ。東京・汐留の本社ビルで16時から行われた緊急会見には、久保社長と後任で社長を兼務する細川知正会長が出席した。しかし、出席を許されたのは新聞社・通信社14社で構成する「ラジオ・テレビ記者会」など一部のメディアだけ。記者会に未加盟である雑誌などはお断りだった。
しかも会場に入れたのは1社1人のみで、カメラ撮影禁止という制限付き。出席した新聞記者によると、常軌を逸したやり方に対して、会見中にも「なぜオープンにやらないのか、こんな閉鎖的な会見はおかしい」などと批判が続出したという。
結局、日テレ側が折れ、カメラ撮影の下で19時から“仕切り直し”会見が開かれた。だが、出席できたのは1回目と同様に記者会加盟のメディアが中心で、その部分の「制限」は変わらなかった。報道する側から立場が反対になった途端、いかにも閉鎖的な体質が露呈した。一連の対応について改めて問い合わせたところ「コメントしない」(総合広報部)。
会見の中でも、辞任のきっかけとなった誤報の原因について、久保社長から詳しい説明はなかったようだ。会見を2回も開きながら、わだかまりを残す中途半端な結果となった。問題の番組は今後、民放とNHKで作る第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が、初めて特別調査チームを設置し、審理することが決まっている。
久保社長の辞任と併せ、報道局長の役職罷免など、番組制作にかかわった社員5人の処分も同日に発表されている。「今後の検証については新体制の下で検討し、実施していく」(日テレ)という。
社長は辞任したものの、代表権を持つ4人の取締役のうち1人が抜けたにすぎない。社内では“天皇”とも呼ばれ、実権を握る氏家齊一郎取締役会議長(写真)も居座っている。
番組作りに対して厳しい視線が向けられる中、今後どこまで説明が尽くされるのか。信頼回復に向けた姿勢が問われている。
株価チャート 日足
(中島順一郎 =週刊東洋経済 撮影:今井康一)
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