コンセント付きの路線バスが増えているワケ 西東京、京成などでスマホの充電が可能に

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コンセント付きの路線バスは、他のバス会社でも導入が始まっている。京成グループの京成タウンバス(葛飾区)は西東京バスより早く、2014年7月から「サービス向上の一環」(同社)としてコンセントのついたバスを運行している。現在は6台あり、車両によってコンセントの数は違うが、後部の座席に3~4カ所設置。こちらもコンセントは携帯電話・スマホの充電用だ。今後も新車の投入に合わせて増やしていく方針という。

スマホやタブレットなどモバイルインターネット全盛の時代を迎え、バス車内ではネット接続ができるWi-Fiサービスの提供も一般化してきた。長距離バスだけでなく、一般の路線バスでも携帯電話会社による加入者向けのサービスなどが普及。例えば西東京バスでは「au Wi-Fi SPOT」が使用可能だ。また、誰でも使える無料のWi-Fiを提供する例もある。都営バスでは2013年12月から無料Wi-Fiのサービスを開始。1回180分まで、1日に何度でも利用できる。

電源は「バス離れ」対策になるか

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北陸新幹線E7系新幹線の普通車に設置されたコンセント(撮影:梅谷秀司)

Wi-Fiやコンセントの提供は「バス離れを防ぐためのサービスの一環」(池口さん)という意味合いも大きい。身近な乗り物である路線バスだが、利用者数は年々減少の傾向にある。

国土交通省のデータによると、乗合バス(路線バス)の利用者数は2013年度で41億7600万人。2003年度は44億4800万人だったため、10年間で約2億7000万人減ったことになる。101億4300万人を輸送したピーク時の1968年度と比べると半分以下だ。

現在では、店や乗り物を選ぶポイントの一つとしてコンセントの有無を挙げる人も多い。鉄道では東海道・山陽新幹線のN700系がグリーン車の全席、普通車では窓側の席にコンセントを設置しているほか、北陸新幹線のE7・W7系は全席に装備している。高速バスもコンセント付きが一般化しており、コンセントの有無によって便を探せる検索サイトもあるなど、電源のある乗り物に対するニーズの高さをうかがわせる。

厳しい運営環境の続く路線バスだが、電源やネット接続など「IT環境」の充実が利用者を繋ぎとめ、新たな需要を獲得する方策のひとつになっていくかもしれない。
 

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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