危険手当320円、コロナに奮闘する看護師の実情

風評被害で心理的に追い詰められるケースも

感染患者がいない病棟とはいえ、感染が疑われる患者がいれば看護師が防護服を着て検体を採取している。

「咳をしている患者を見ると、コロナ患者じゃないかと思ってしまいます。終わりが見えない中、自分たちが感染したらどうしよう、家族に感染させたらどうしようと心配です。2歳の孫がいますが、娘も介護士をしているため仕事を休めません。娘からは『お母さん、感染しないでよ』と言われています」(前出の看護師)

「このままでは離職者が出る」

日本看護協会は4月上旬に記者会見を開き、疲弊する医療現場の窮状を訴えた。重症化した新型コロナ患者をICU(集中治療室)などで治療する場合、一般病床と比べて看護師数が最大で4倍必要になるという。会見では、ある呼吸器専門病棟の現状が紹介された。

「2月上旬から10人の感染症患者が入院している。約30人の看護師と看護助手のうち、感染症患者を担当するのは選抜された約10人。配偶者や子どもを持たない一人暮らしの独身者だ。1カ月半以上過ぎたが終わりが見えない。身体的、精神的にも疲弊し限界である。このままでは離職者が出る」(福井トシ子会長)

日本看護協会では、現在離職中の5万6000人の潜在看護師に復職を求めていく方針だ。しかし、「もともと過酷な業務なうえ労働条件が悪いから離職者が多い。自分だけでなく家族にも危険が及ぶ今の状況で復職は難しいだろう」(複数の看護師)。

同協会は4月15日、政府に対して感染患者やその疑いのある患者に対応した看護師への危険手当の支給と増額、看護師が帰宅できない場合の宿泊費の補助を求める要望書を提出した。同協会の熊谷雅美理事は危機感を募らせる。

「院内感染が生じ、医療従事者は自身が感染する、感染の媒介者になる不安や恐怖を感じながら職務にあたっている。なかでも看護職は24時間、365日患者に関わっており、感染に対するリスクは甚大だ。無症状でも潜伏期に感染させることがわかっているため、誰もが疑心暗鬼になっている。『感染させられるのではないか』という不安から、看護師への誹謗中傷や差別意識はますます強くなっている」

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