日本の「破綻」は、もはや杞憂と言い切れない 大義なき選挙戦の裏で財政再建が置き去りに

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このまま借金を野放しにしていいのか(イラスト:FUTO / PIXTA)

野党第一党の民進党が崩壊するなど、政局は大混乱だが、その陰で財政再建の看板を掲げる政党が消滅してしまった。アベノミクスを踏襲しながら、財源がべらぼうに必要となる「ベーシックインカム(最低所得保障制度)」導入を公約に掲げる「ユリノミクス」なる言葉も登場してきた。

アベノミクスを筆頭に、すべての政党が「財源問題」を放置して、国民に耳当たりのいい政策ばかりをささやく選挙戦になりそうだが、日本の財政はいまや待ったなしの「大赤字」状態。このまま借金を野放しにしていいのか……。

実は、現在の日本政府が安心してカネをバラまけるのも、その大半を中央銀行である日本銀行が、国債を買い取ってくれているおかげだ。しかしその影響で、国債市場はいまや閑古鳥が鳴く閑散とした状態。民間銀行の保有比率はアベノミクス以前に比べて半分に減少し、流動性の少ない危機的なマーケットになっている。今後、どんな事態になるか予想もつかない。

とりわけ、米国のバブルが崩壊して再び金融緩和が始まったときには、日銀は手の施しようがなくなるのではないかといわれている。総選挙で各政党が掲げる「財政再建なき政策」を鵜呑みにするとどんな目に遭うのか。

「逆ザヤ」が鮮明になりつつある日本国債

今回の総選挙は「消費税率引き上げで得られる税収の一部を、財政再建ではなく別の目的に使う」ことを問う名目で行われる。

消費税率が8%から10%になれば、その増税分(約5兆6000億円)によって財政のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化が実現するはずだった。それが棚上げされることを意味する。

安倍晋三首相の発表と同時に、日本国債は売られて金利はわずかだが上昇。同時に、国債がデフォルト(債務不履行)になったときの保険といわれ、信用リスクを示す「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」の保証料(スプレッド)も上昇した。

ソブリン債のCDS保証料は、一般的に400ベーシスポイント(以下bps、4%)を超えると国家破綻級のリスクといわれるのだが、日本国債のCDSはこれまで26bps(0.26%、JGB CDS USD SR 5Y)前後で定着。衆議院解散報道が出た後の9月末には、38bps(0.38%同)程度にまで急騰した。

ちなみに、日本の国内企業が発行する債券のCDSスプレッドを示す指数に「Markit iTraxx Japan(マークイット・アイトラックス・ジャパン)」がある。こちらも、日本国債と同時に上昇。現在は44.74bps(0.447%、2017年10月16日)となっており、日本国債のCDSとともに国家破綻レベルにはまだまだ程遠い。

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