【産業天気図・電子部品】需要減退や円高圧迫で業績下方修正が続出、天気は「曇り」へ悪化
電子部品業界を取り巻く環境は一段と厳しさを増してきた。日米景気の後退観測が高まっており、為替も1ドル100円を挟む円高傾向が続いている。ローム<6963>や太陽誘電<6976>、ニチコン<6996>のように、国内外での需要失速や円高を理由に2008年3月期の業績予想を下方修正する動きも目立ってきた。「会社四季報 春号」でも、業界大手の半数以上が08年3月期および09年3月期の業績予想を減額している。依然として今期、来期ともに増益を維持する企業のほうが多いとはいえ、潮目は変わった。1ドル100円を前提とすれば、来期減益組が増えるのは必至。業界天気は08年度前半、後半ともに「曇り」と考えるべきだろう。
業界団体の電子情報産業協会が調べた電子部品グローバル出荷統計によると、出荷額は05年3月から直近公表の07年12月まで、34カ月連続の前年比プラスを記録している。ただ、月次の伸び率は12月現在で前年比2%まで急速に縮小しており、国内出荷額は同6%の減少。国内需要の減少を海外向けでかろうじてカバーしている状態だ。今年1月以降は、国内外の景気後退観測が一段と高まっており、前年比連続プラスの記録が途切れる公算が大きい。
こうした中、業界大手の間で今08年3月期業績予想の下方修正が続出している。京セラ<6971>は、円高に加え「米国金融機関向けのプリンターの需要が減退している」などサブプライム問題の影響もあって営業利益予想を減額。ロームもデジタル家電を含む民生機器市場の調整などを背景に集積回路や半導体素子が想定を下回っており、一転営業減益となる。そのほか、コンデンサー大手の太陽誘電やニチコン、携帯電話向けコネクター大手のヒロセ電機<6806>も一転営業減益へ下方修正した。この中でホシデン<6804>やミツミ電機<6767>の増額が異彩を放つが、任天堂向け部品の特需が好調の主因であり、やや例外と考えるべきだろう。
一方、代表的な電子部品であるコンデンサーの業界では今春に各社の増産体制が整うため、供給過剰による単価引き下げ加速も危惧されている。「来期に向けた受注分の値下げが想定していたより早めに出てきた感じはある」(村田製作所幹部)。携帯電話やパソコン、薄型テレビなどのデジタル機器は、途上国へと裾野を広げつつ増大基調にあることに変わりはないが、需要の伸びが鈍化したり、単価下落で採算が悪化するおそれは十分ある。特に、北京五輪後には薄型テレビを中心に需要が減退する可能性が大きく、世界景気の動向と相まって、需給バランスには警戒を要する。
円高の影響も大きい。対ドル1円円高で、京セラやロームでは10億円前後の営業益減少要因となり、村田製作所では16億円前後にも及ぶ。今通期の平均レートは1ドル114~115円程度と見られるが、来期1ドル100円を前提にすると、15円近くもの円高となり、これだけで百数十億円以上の利益が吹き飛ぶ計算になる。これをカバーするには、かなりの増産効果を引き出す必要があるが、先行投資に見合うだけの高い稼働率を維持し続けられるかどうか、微妙な情勢といえるだろう。
●主要各社の08年3月期、09年3月期業績予想
(前期比増減率、『会社四季報』春号予想ベース)
08年3月期 09年3月期
売上高 営業利益 売上高 営業利益
京セラ 1% 4% 16% 1%
<6971>
TDK 0.3% 13% 4% 2%
<6762>
アルプス電気 ▲3% ▲9% 1% 25%
<6770>
日東電工 10% 9% 8% 9%
<6988>
日本電産 14% 17% 11% 13%
<6594>
村田製作所 11% 8% 3% 2%
<6981>
ローム ▲5% ▲4% ▲5% ▲10%
<6963>
ミツミ電機 6% 31% 3% 9%
<6767>
太陽誘電 6% ▲9% 4% 0%
<6976>
日本航空電子工業 12% 36% 10% 6%
<6807>
日本ケミコン 6% 6% 5% 8%
<6997>
ニチコン 3% ▲32% ▲2% ▲13%
<6996>
ヒロセ電機 3% ▲3% 4% 3%
<6806>
エプソントヨコム 8% ▲18% 15% 4%
<6708>
日本電波工業 9% 15% 10% 11%
<6779>
ホシデン 33% 79% 8% 14%
<6804>
【中村稔記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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