相鉄、ネイビーブルーで挑むメジャーへの道 初の都心乗り入れで「選ばれる沿線」目指す
これまでのイメージを「塗り替える」新塗装は、相鉄グループのブランド戦略「デザインブランドアッププロジェクト」に基づいている。デザインを一新するのは電車だけではなく、駅舎のほか、相鉄と相鉄バスの制服、沿線の商業施設なども対象だ。
プロジェクトがスタートしたのは約2年前。デザインの総合監修は、熊本県のPRマスコットキャラクター「くまモン」の生みの親として知られるクリエイティブディレクターの水野学さんと、空間プロデューサーの洪恒夫さんに依頼した。
このプロジェクトには広告代理店などは入っておらず「本当に手探りで始めた」(鈴木さん)。立ち上げ時期には水野さんらと社員が毎週のようにディスカッションを重ね、現在でも頻繁に話し合いを続けているという。
総合監修の2人は相鉄沿線出身者ではないが、洪さんは横浜生まれ、水野さんも神奈川県の茅ヶ崎育ちと、神奈川県や相鉄には縁がある。「お二方とも相鉄には愛着を持っていただいているし、『相鉄をメジャーにしたい』と汗をかいていただいている」と鈴木さんはいう。
駅舎のリニューアルはすでに横浜の隣駅、平沼橋駅で行われており、グレーを基調としたデザインに変更されている。鈴木さんは、もう一方のターミナルである海老名駅など他の駅についても「普遍的な材料、例えばレンガやガラスなどを使い、時間が経っても『古くなった・汚れた』ではなく、味があるといわれる駅舎をつくっていきたい」と語る。
紺色の電車で「選ばれる沿線」へ
相鉄が大規模なデザインプロジェクトに取り組む背景には、利用者の減少が続いているという危機感も強い。相鉄の輸送人員は1995年をピークに、2004年までの9年間で1割減少。その後は若干の上下があるものの全体的には漸減傾向にあり、2014年度の輸送人員も前年度比1.6%減の2億2457万人となっている。
そこで相鉄が期待をかけるのが「選ばれる沿線」としての認知度アップを図るチャンスとなる都心乗り入れだ。JR線、東急線に乗り入れるための直通線は、途中駅の西谷から分岐する。直通線が開業すれば、これまで横浜での乗り換えが必要だった東京都心までが1本でつながる。
だが、相鉄グループの本拠地は、ターミナル駅であり大規模な商業施設を構える横浜だ。相鉄の利用者は7割が東京都心へ向かうといい、これらの利用者が乗り換えで利用することから、横浜駅と周辺の商業施設は賑わい続けてきた。直通線が開通すれば、横浜を通らずに直接都心に向かう列車が走り、ターミナルを通らない乗客が増えることになる。
それでも都心直通に力を入れるのは「そもそも沿線に人が住み、潤わなければ横浜の賑わいもない」(鈴木さん)からだ。「じり貧を続けるよりは攻めていく」。他社との協議も必要になるが「行きは直通、帰りは横浜経由」といった利用を見込み、都心直通線経由と横浜経由の両方を選べる定期券も構想する。
都心乗り入れを機に新たなブランドイメージの構築を図り「メジャーな鉄道」を目指す相鉄。長島経営戦略室部長は「(乗り入れによって)ようやくスタートラインにつくところからの出発」と話す。ネイビーブルーの電車が利用者にどれだけ認識されるかが、今後の相鉄のカギを握っているといえる。
関東地方で車体全体を塗装している鉄道といえば、最近はステンレス車両もあるものの、奇しくも同じ横浜を通る赤い電車、京急電鉄が有名だ。近い将来「横浜の電車」といえばブルーと赤、というイメージが定着する日が来るだろうか。
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