日本銀行が追加緩和を見送り 緩和の遂行にあの手、この手……
--金融緩和の影響で銀行の利ザヤが低下し、収益が圧迫されているのではないか。
金融が日本の経済を支えており、金融機関が日本経済の状況と乖離した収益力があるとは考えていない。大手行は近年、アジアでの営業基盤強化の努力をしている。ほかの金融機関も含めて中小企業のビジネス展開に対してソリューションを提供している。いずれにしても、金融と実体経済がリンクしている以上、金融機関自身の努力と日本経済全体の成長力を引き上げが必要だ。
--貸出が低迷する中で国債投資が増え、国内銀行は今後の経営強化に向けた解を見出しにくい状況にある。
経営者は難しい状況の中で必死になって今の問題に対する解を見つけようと努力している。やはり日本経済の成長力を高める努力が必要だ。金融機関の使命は成長性のある企業を発掘し、リスクとリターンを適切に評価したうえで、貸出を行っていくところにある。
日銀としても金融機関の取り組みをできるだけサポートしたいという気持ちから、成長基盤強化の資金供給を行っている。政府と金融機関の取り組みがあいまって収益基盤が改善していく。
--各国で追加的な金融緩和の動きが相次いでいる。日銀としてそうした緩和の動きを考慮していくのか。
日銀は現在でも間断なく金融緩和を強化している。われわれが見るのは経済、物価の先行きの姿。各国の金融政策自体に機械的にリンクして(日銀が)政策の運営をするわけではない。
--日銀の海外経済の見方は強気では?
見方が楽観的だということはない。米国経済を例に取るのがもっとも相応しい。FOMCのメンバーの経済見通しをみると下振れているが、日銀は一貫して慎重な見通しを変えていない。むしろわれわれの見方に近付いてきたというのが率直な印象だ。
--前回の決定会合から欧州では複数の合意もあった。債務問題をどうみているか。
懸案事項には一定の前進がみられる。欧州債務問題のリスクの本質は財政、金融システム、実体経済という3者間の負の相乗作用だ。これを遮断する有効な取り組みがなされなければ、周縁国中心に成長が下振れるだけでなく、金融の不安定化を通じて世界経済に大きな影響を与える。第1に財政健全化と構造改革、第2に金融システムの安定強化、第3に銀行同盟など欧州統合に向けた取り組みの3点で明確な前進が図られる必要がある。
(井下健悟 =東洋経済オンライン)
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