「フリーゲージ」新幹線が抱えている根本問題 未完の技術を前提に作った計画はどうなるか
今回の不具合は、現時点ではいずれも最高時速260kmでの耐久走行試験によって生じたものと考えられている。だが、FGTが新幹線で高速走行を行うのは今回の3次試験車が初めてではない。
先代の2次試験車では「瞬間的で、耐久走行と呼ばれるものではまったくなかった」(国交省)とはいうものの、時速270kmでの走行試験は行っており、2010年の「軌間可変技術評価委員会」では「走行試験において、時速270kmで安全・安定に走行できることを確認した」との評価を下している。
また、2次試験車はその後、在来線で約7万kmの耐久走行試験、約1万回の軌間可変耐久試験、試験台での台車の高速走行試験を行い、2014年2月に開催された委員会では「車両の安全な走行に影響を及ぼす軌間可変機構の不具合や著しい部品摩耗等は認めらないことから、軌間可変台車の基本的な耐久性能の確保に目処がついたと考えられる」と評価している。
国交省のwebサイトでも見られるこの委員会の際の資料では、次期試験車両(3次車)では3モード耐久走行試験を行うことで「保全性の分析・検証を深度化する」ことと「経済性の分析・検証を進める」とされている。2次車の時点で基本的な耐久性は問題ないと認識されており、3次車の狙いは根本的な部分の耐久試験ではなく、より実用化に近い状態での耐久性の検証だったと読み取れる。
トラブルはFGTの「根幹部分」
FGTの開発について取材した経験のある鉄道技術ライターの川辺謙一さんは「なぜ今になってこのような根本的な話が出てきたのか」と驚く。「トラブルが起きた部分は軌間可変を行うFGTの根幹の部分」だからだ。
3次試験車の台車は、2次車のものをベースとして軽量化などを図っているが、開発を進める鉄道・運輸機構の担当者によると、今回のトラブルは軽量化とは関係がないという。川辺さんは、今回のトラブルが起きたのは軌間可変技術の重要部分であることから、1次試験車や2次試験車でも起きていた可能性があると推測できるため、「ここの信頼性がなければ、FGTの実現は難しいのではないか」という。
国交省は、今後さらに調査・分析を進め、部品の形状変更や材質の変更などを行い、室内での「高速回転試験」などを行った上で、順調に進んだ場合は2016年度後半から「3モード耐久走行試験」を再開する予定だ。
だが、川辺さんは「今回の対策は、部品変更など対症療法で一時的には解決できても、根本的な解決策にはならないのではないか」と懸念する。抜本的なトラブル対策を実施するには、車軸のたわみや振動など今回のトラブルの理由とされる現象の原因を探り、根本から設計を見直さなければ終わらないだろうと指摘する。
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