「フリーゲージ」新幹線が抱えている根本問題 未完の技術を前提に作った計画はどうなるか
九州新幹線長崎ルートは、政府・与党により2015年1月、2022年度の開業予定から可能な限り前倒しを目指すことを決定した。
だが、2022年度であってもFGTの開発スケジュールはもともと厳しかった。「3モード耐久走行試験」で60万kmを走り込むのには約2年半を費やす必要があり、2014年秋からトラブルなく順調に進んでいたとしても、終了は2017年に食い込んでいたことになる。
2014年春の3次車報道公開の際の会見で、国交省の担当者は営業用車両の設計・製造について「通常、新幹線は5年半くらいかかっているので、6年くらいをみて開業に間に合わせたい」と述べた。2017年から6年かかるとなれば2022年には間に合わない。報道陣からの指摘に「耐久走行試験の後半で設計には着手することになるのかと思う」と答えたものの、そもそもトラブルがなかったとしても間に合うかどうかはギリギリだったといえる。
技術未確立のまま「開業前倒し」
FGTの導入を検討しているのは九州だけではない。北陸新幹線の敦賀から先の区間についてもFGTを導入し、関西~北陸間を乗り換えなしで結ぶことが考えられている。敦賀までの開業は当初予定より3年前倒しされ、2022年度の予定だ。
だが、北陸は九州と違い、冬には寒さと雪が課題となる。台車が複雑なFGTには雪対策が不可欠だ。実際の運行を担うことになるJR西日本も雪対策などの技術開発は進めているものの、基本的には九州向けに開発されているFGTをベースとして設計することになっている。
JR西日本の真鍋精志社長は「フリーゲージはどんなに頑張っても10年はかかる」としており、開発が順調に進んだ場合でも、敦賀開業が前倒しとなった時点でFGTの導入は間に合わない見通しだった。九州でのFGT実用化が遅れれば、こちらもさらに遅れることになる。
実用化に向けて開発された3次試験車で起きた、FGTのトラブル。開発が順調に進んでいたとしても、九州新幹線長崎ルートではギリギリの導入になり、北陸新幹線については間に合わなかっただろう。技術の検証はもちろん、まだ完全には確立されていない技術の導入を前提としつつ進められてきた新幹線計画についても、問題点が問われるのではないだろうか。
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