【産業天気図・商社】世界経済の失速懸念あるが、資源・エネルギー高追い風に「晴れ」続く

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米国のサブプライムローン(信用力の低い住宅ローン)問題を引き金とする世界経済の失速懸念と円高リスクはあるものの、総合商社の業況は、引き続き「晴れ」となりそうだ。
 今08年3月期第1四半期の大手商社各社の決算は軒並み好調だった。三菱商事<8058>、住友商事<8053>は前年同期比で減益だったが、主に特殊要因から。事業面に目を向けると極めて好調である。
 三井物産<8031>は第1四半期に既存権益の売却が集中したこともあって、純益は前年同期比2.2倍の1810億円と通期の会社計画のほぼ半分を稼いでしまった。一過性の売却益を除いて考えても、市況高で資源・エネルギー分野が伸長。コンシューマサービス・情報産業、機械・プロジェクト、化学品、鉄鋼製品を中心に増益となるなど、計画よりも上を行っている。伊藤忠商事<8001>もアゼルバイジャン油田が好調な金属・エネルギー事業、欧州向け自動車取引が業績を牽引した。丸紅<8002>も食料、カタールのLNGプロジェクト、輸送機・産業機械等が好調だった。
 総合商社で第1四半期を終えた時点で業績予想を上方修正した会社はないが、「会社四季報」秋号では、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、双日<2768>の今期予想を会社予想よりも小幅ながら増額している。
 各社の為替前提は1ドル110円ないしは115円で、第1四半期に関しては各社とも前提よりも円安での推移となり、利益にプラスとなった。8月の「サブプライムショック」により過度の円安は調整されているが、115円程度の現状が続く限り、年間では若干のプラスが残るだろう。
 加えて、相場の反落を前提にしていた資源・エネルギー価格が高値圏にあることもプラス材料だ。各社の原油価格前提は1バレル55~58ドルだが、現在の市況では70ドル超の水準が続いている。非資源・非エネルギーでも自動車や機械などが全般に好調なことも収益に寄与している。
 もちろん、サブプライム問題をきっかけに米国経済が急失速し、新興国を含む世界経済全体が不況に陥るようであれば、商社の業績への影響は免れない。が、現時点ではそこまでの心配をする必要はなさそうだ。
【山田 雄大記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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