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トランプ大統領が進める外交戦略「FAFO」とは何か、「ふざけた真似をすればどうなるか分かっているな」という外交の狙いとは

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トランプのこの直接的な言葉遣いは、従来の外交慣習からの明らかに逸脱している。外交用語にありがちな曖昧さや、「あらゆる選択肢を検討する」といった表現をあえて捨て去り、即時の服従を要求するのがFAFOの核心だ。

ベネズエラでの事件は、このFAFO警告が実際に行動に移された劇的な一例となった。2025年を通じてトランプはマドゥロに圧力をかけ続け、安全な国外退去を条件に辞任を迫った。同年11月末には直接電話で最後のFAFO警告を突きつけた。

「直ちに辞任し民主政権への移行を認めるか、悲惨な結果を迎えるか、どちらかだ」。軍の統制権だけは手放さないとの条件を示したマドゥロの回答は到底受け入れられるものではなかった。結局その数週間後、米国特集部隊のデルタフォースが要塞化されたマドゥロの居住施設に急襲をかけ、護衛についていたキューバ人兵士数十人を殺し、マドゥロ本人を捕縛した。

彼は現在、ニューヨークの刑務所で拘束されている。これこそ、まさにトランプが掲げるFAFOドクトリンの象徴だ。

アメリカの歴史的戦略が再燃した

トランプが抱くグリーンランド戦略は、決して新しいものではない。

アメリカが1867年に当時のロシア帝国からアラスカを購入した直後、当時の国務長官ウィリアム・スワードはグリーンランドとアイスランドの買収を提案した。その後も1910年には、当時アメリカ領だったフィリピンとの領土交換が検討され、さらに1946年、トルーマン大統領は密かにデンマークへ1億ドル相当の金塊(現在価値で約1兆7000億ドル=約268.5兆円)を提示し、購入を試みた。

グリーンランドのヌークの街並み(写真:ブルームバーグ)

トランプ自身がグリーンランドに関心を持ち始めたのは、1期目の大統領時代からだ。元国家安全保障補佐官ジョン・ボルトンによれば、18年、トランプのペンシルベニア大学時代から60年来の友人であるビリオネアのロナルド・ローダー(元エスティローダーCEO)との会話が、その戦略的関心に火をつけたという。

2期目を迎えたトランプの決意はさらに強まった。25年5月、グリーンランド獲得のため軍事力行使も排除しないと明言した。カナダに対しては軍事力による併合を完全に否定したトランプだが、人口も軍事力も少ないグリーンランドには明確に区別をつけ、「われわれにはグリーンランドがどうしても必要だ。グリーンランドの人々はごく少数で、われわれが面倒を見て大切にする。だが国際安全保障のために必要なのだ」と述べた。

カナダが兵力6万8000人、F/A-18戦闘機78機、人口4000万人という堅固な防衛態勢を有するのに対し、グリーンランドは常備軍を持たず、デンマークの保護の下で暮らす住民はわずか5万6000人にとどまる。デンマークとグリーンランドを合わせた人口規模は米メリーランド州1州におおむね匹敵し、この対比は、グリーンランドが抱える戦略的脆弱性の深刻さを浮き彫りにするのだ。

今年1月9日、トランプはさらに踏み込み、「彼らが望もうと望むまいと、われわれは何かをする。そうしなければロシアか中国がグリーンランドを掌握する。そんな隣国を持つことは許さない。」と言った。彼はさらに、「穏やかな道か、厳しい道か」と断言したのだ。トランプ政権のスティーブン・ミラー氏は、CNNに対し自信満々にこう語っている。

スティーブン・ミラー夫人の1月6日のポストに掲載されていたデンマークの地図(写真:X投稿より)

 

「世界を支配するのは、力、武力、権力だ。これこそ動かしがたい鉄則だ」

これに対してグリーンランドの人々は強く反発した。

超党派連合が「われわれはアメリカ人にもデンマーク人にもなりたくない。グリーンランド人でありたい」と断固宣言した。25年の世論調査でも、アメリカによる併合への反対は85%、賛成派はわずか6%に過ぎない。

しかし、それでもグリーンランドが置かれている地政学的状況は非常に厳しい。同島の人口はわずか5万6000人だが、その面積は約217万平方キロメートルにも達する。この規模はフランス、スペイン、ドイツ、イタリア、イギリス、ギリシャ、オーストリアを合わせた広さに匹敵し、日本の国土の約6倍にもおよぶ広大さだ。

こうした圧倒的な人口密度の低さと広大な領土が、グリーンランドの戦略的弱点となっているのだ。

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