「私は180cm・A型、父は160cm・O型、母は140cm・B型」 46歳で「両親との血縁関係なし」知った男性の"今" 14歳で家を飛び出した"違和感"の正体

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一方で不思議と、育ての親に対しても情が湧いた。改めて自身の半生を振り返ったことで、親不幸な過去を申し訳なく思い、事業を畳んでからは両親と暮らすようになる。

育ての親と同居しながら、実親を探し続ける生活が始まった。

東京都相手に3億円の損害賠償請求

2004年以降、取り違えの相手を見つけるのは、途方もない道のりだった。

はじめはDNA鑑定書を持参して、厚生労働省や社会保険庁(現在の日本年金機構)、東京法務局を巡ったが、真意を疑われ、にべもなかった。数少なく取り合ってくれた家庭裁判所も、できることと言えば姓名を変更する程度だった。

その後も手を替え品を替え、アプローチを続けたものの、実親探しは難航した。

当時は住民基本台帳(区域内の住民票をまとめた公簿)が閲覧できたため、全区民にあたる約35万人分のページを捲る。そのうち同時期に出生して、現住所がわかる70人近い自宅を訪問したものの、核心に迫る情報は得られなかった。また、名簿業者から10万人分に及ぶ戸籍も購入したものの、それらは更新されておらず不正確な情報をつかまされる形となった。

江蔵智さん
江蔵智さん。撮影日は2025年12月19日(筆者撮影)

個人で動くには限界も見え、2004年10月には東京都を相手取り、3億円の損害賠償請求を提訴した。印紙代は80万円相当かかったものの、3億円という法外な金額から世間の耳目を集めれば、実親が名乗り出てくれるのではと期待も寄せた。

結果的に、一審では新生児取り違えが事実として認定され、二審では2000万円の賠償金が支払われた。思惑通り各テレビ局やニュース番組がこぞって特集を組んだ。

ただ、それでも実親は見つからなかった。2000万円の賠償金も、これまでの労力を天秤にかければ、慰めにも及ばない。

何より落胆したのは、判決が出ても、東京都が調査する意向を見せなかったことだ。

裁判後の定例記者会見で、当時の石原慎太郎都知事は「資料を開示する」と明言したものの、事態は進展しなかった。判決文に情報開示や調査を命じる文面はなく、役所に申請すれば「相手方の家庭を壊すかもしれない」と手のひらを返される。

むしろ実親探しに奔走するほど、不可解な事実が浮かび上がるばかりだった。

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