妊婦を追い詰める「つわり」の苦しみ。アメリカでは第一選択薬のつわり薬「ボンジェスタ」、国内開発が大きく遅れた要因とは?

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一方、アメリカや欧州の一部でつわり治療の第一選択薬になっているのがボンジェスタだ。

過去には安全性をめぐる議論もあったが、20万件を超える膨大な臨床試験データによって安全性が示されている。ボンジェスタの成分は、アメリカでは50年代から使用され、3500万人以上の使用実績がある。

18年に日本産科婦人科学会は厚生労働省に対し、ボンジェスタの開発企業を公募するよう要望を出した。その後も複数の企業が開発を検討してきたが、今回持田製薬が導入を決めるまで、最終決定に至らなかった。

なぜ、国内での開発に難航したのか。事情は一様ではないが、妊婦を対象にする臨床試験のハードルは高いうえ、採算性の懸念があることは確かだ。

さらに、厚労省に開発を要請した日本産科婦人科学会の中でも、「つわりは病気ではなく、医薬品の適応にはなじまない」とする慎重論があった。

国内承認が遅れる中、つわりに苦しむ妊婦たちの間では、一部のクリニックが行う「輸入薬」による自由診療に頼る動きが広がっている。だが、価格は1週間分で1万円超と高額なことも珍しくない。「薬がすべての問題を解決するわけではない」と指摘する医師もいる。

持田製薬によるボンジェスタの開発は、日本の「つわりは耐えるもの」という風潮を変える新たな一歩となるか。

国内で開発が遅れた背景や、ボンジェスタを処方するクリニック医師の見方を紹介する本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「日本初『つわり治療薬』開発に持田製薬が名乗り/世界43カ国で承認済みも日本では未開発のナゼ」でご覧いただけます。
印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学卒、同大大学院修了後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機、介護業界などの担当記者、『週刊東洋経済』の巻頭特集などを担当し、現在は医薬品業界の担当記者。働き方改革、ジェンダー問題などに関心。

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兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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