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「金融政策だけじゃない、満州の取材をしていた」…元日銀副総裁にしてノンフィクション作家の藤原作弥さんが生前語った引き揚げ記秘話【前編】

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10歳に満たない少年が毎日、タバコを入れた箱を持って闇市の人の間を「タバコいらんかね」と売って歩く。人間模様を観察しているわけです。八路軍(共産党軍)がスパイを捕まえて銃殺刑に処するシーンも見ていました。

少年はいつも飢えている。知識に飢え、食べ物に飢えている。飢えている少年がガツガツ大人の世界を一生懸命のぞき見しようとしている。これは1つの世界ができると思いました。

取材して後からわかったのは、当時父が雇われ店主をしていた古本屋は、敗戦国民の秘密結社の本部だったことです。

安東の町は当時、内戦状態で、中国国民党の政府軍と中国共産党の八路軍が市街戦を演じたりしていました。そのどちら側にもつかず、日本人を無事、日本に帰すための仕事を中国人にばれないよう秘密裏に行う。父はその秘密結社の事務局長のような存在でした。

助かったのは、父の秘書のような仕事をしていた女性に取材できたことです。彼女は主婦として、満州で辛酸をなめたことなど何も言わずに暮らしていた。最初はご主人に心配をかけたくないから昔話はしたくない、と言っていたのですが、次第に彼女のほうから当時のことを調べてみた、といって話をしてくれるようになりました。

満州・安東を知る2人の日銀幹部

『満州、少国民の戦記』(新潮文庫)

――文庫版には当時、日本銀行副総裁だった三重野康氏(のちに総裁)が解説を寄せています。

満州の本を書いたのは、日銀記者クラブを担当しているときでした。

三重野康さん、それに佃亮二さん(元日銀営業局長、理事)は日銀の取材対象でもあったわけだけれど、私はもっと功利的で、2人とも舞台の安東に関係がある人だったので、満州のことを一生懸命取材して、金融のことも取材した。

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