シェア争いにはまったく興味がない--首藤由憲・キリンビバレッジ社長
大手飲料メーカーのキリンビバレッジが苦境に陥っている。2010年に伊藤園に3位の座を奪われ、11年にはアサヒ飲料にも抜かれ5位に転落した。4月に就任した首藤由憲社長は、どう立て直していくか。
──2年連続でシェアを落とす厳しい状況下での船出です。
09年から、キリンビバレッジのマーケティング本部長として商品開発をすべて任されてきた。これまで計画どおりの成果が出ていないことを人のせいにはできない。自分で決めてきたこれまでの計画を今後も進めていくが、足りないものはどんどん足していきたい。
──具体的には何が足りないのでしょうか。
新しい価値の提案こそがメーカーの役割だが、それがまだ足りない。何もしなくてもお客様が飲料に興味を持ってくれるような、幸福な時代は終わった。成熟した市場でヒットを出すには、既存のカテゴリーに驚くような新しい付加価値が必要になってくる。それをつねに考えながら、覚悟を決めてどんどんチャレンジをしていきたい。
2年前からカテゴリーでカテゴリーを置き換えるという新たな挑戦を始めている。「午後の紅茶 エスプレッソティー」がまさにその成功例だ。紅茶で缶コーヒーのカテゴリーを置き換えることでヒットした。今もお酒のカテゴリーを清涼飲料で置き換える「キリンの泡」や、特定保健用食品のカテゴリーをコーラで置き換える「メッツコーラ」は大きな反響を呼んでいる。年間100万箱出れば「売れた」と言われる中、メッツコーラは発売から1カ月余りで100万箱を超えた。
──ヒット商品を生み出すために何が必要だとお考えですか。
お客様目線に立った商品開発が最重要だとあらためて実感している。社内の議論がお客様目線から少しでも外れるといい商品は生まれない。お客様を100%考えての議論なら、いくらでも時間を割くべきだが、それ以外の議論は一瞬たりともする必要はないと社員に言っている。