制度というものは、本来の形があらかじめ決まっている静態的な存在ではありません。
歴史の中で、既存の要素を残しながら新しい要素を取り込み、環境変化に適応する形で、少しずつ改変が積み重なってきた動態的な構造物です。
にもかかわらず、年金をめぐる議論では、「年金は本来こうあるべきだ」「この制度は、はじめはこうだったのだから、今もこうあるべきだ」といった発想がしばしば顔を出す。
そこでは、変化の積み重ねとして制度を捉えるのではなく、どこかに不変の原型が存在するかのように考えられてしまいます。
しかし、制度の起源や初期の姿を根拠に、現在の制度の妥当性や持続可能性を判断しようとすることは、論理学でいう「発生論の誤謬」に当たります。
制度は時代とともに変わる生き物
発生論の誤謬とは、ある制度や考え方が「いつ、どのような状況で生まれたか」という由来だけをもって、その後の変化や現在の機能を十分に検討することなく、正当性や有効性を評価してしまう論理的な誤りを指します。
私はゼミを始めた30年近く前から、学生にはいつも、自分の議論が「そもそも」「本来」と言わざるをえない局面に追い込まれたら、それは研究のうえでは危険信号だと話してきました。
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