2026年は「反EUなら勝利する時代」の終わりか/政治的変化の兆しの一方、経済は停滞ぎみ。フランス発の金融市場の混乱も

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景気や物価、そして金融のバランスに鑑みると、欧州中銀(ECB)の金融政策運営の舵取りは極めて難しい。

2025年の後半に入り、ユーロ圏の物価上昇率はECBが目標とする2%近傍まで低下し、安定して推移するようになった。ただしECBは、政策金利を1%台半ばまで引き下げているが、一段の利下げには慎重な立場を堅持する。

利下げしてもユーロ安は誘導しにくい構造

トランプ関税という景気下押し圧力がある一方で、EUの物価上昇は粘着性を強めている。そのためECBは、景気の加速を促すための利下げには慎重にならざるをえない。他方で、ECBはユーロ高という問題も抱えている。このユーロ高は「ドル不安」の裏返しでもあるため、ECBが利下げをしたところで、緩和される度合いは限定的だ。

ユーロ高は物価上昇の安定に資する反面で、輸出の重荷となってしまう。このように、抱える課題が交錯しているため、ECBは大胆な動きが取れない状況が続くことになる。

もちろん、景気と物価に対する下振れ圧力が極端に強まった場合や、フランス発の金融不安などが顕在化した場合では、ECBは大胆な金融緩和に踏み込むことになる。

とはいえ基本的には、2026年のECBの利下げは0.25%ずつ、1〜2回にとどまるだろう。EUならびにユーロ圏の実質経済成長率も1〜1.5%増のレンジと、2025年(1.0%増程度の見込み)からは加速が見込まれるが、基本的には勢いを欠く展開になると予想する。特にドイツとフランスという二大国の景気は、加速感に欠けると考えられる。

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