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スペイン経済絶好調!それでも忍び寄る影とは/中南米からの移民で住宅価格高騰、インバウンド観光に続く成長領域の模索

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スペイン・バルセロナにある1882年着工の世界遺産サグラダ・ファミリア(聖家族贖罪教会)は世界でも有数の観光地だ(写真:Bloomberg)

ヨーロッパの経済で今、最も景気がいい国を挙げろと言われたら、間違いなくスペインだろう。先日も、1人当たり所得が日本を超えたと話題になった。10年前の水準と比べた個人消費の伸びは、ユーロ圏の主要国の中で最も高い。債務危機の面影など今や薄く、長期金利はフランスやイタリアよりも低水準。この世の春である。

牽引するのは欧州からのインバウンド観光

そのスペイン経済の成長を牽引するのが、旅行サービス輸出、つまりはインバウンド観光であることはよく指摘される。そのインバウンド観光に代表されるサービス業を支えているのが、中南米からの移民労働者だ。スペイン国籍を有する人口の数は減少しているが、中南米からの移民労働者が急増したことで、国全体の人口は増えている。

周知のように、スペインと中南米諸国との間には、歴史的に深いつながりがある。要するに、中南米の人々はスペイン語を話す。そしてキリスト教、特にカトリックの信者が多いため、文化摩擦も比較的軽い。そのため中南米の人々にとっては、治安が安定しており所得水準が高いスペインは、もともと人気の出稼ぎ先であり、移民先だった。

欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行うエコノミストによるリポート

中南米からスペインへの移民の流れは、アメリカが移民政策を厳格化させたことでも加速している。トランプ第1次政権以降、近年のアメリカは移民政策を厳格化させている。こうした流れを嫌い、移民先をアメリカからスペインにスイッチする中南米の人々が増えて、スペインの経済を支えるに至る。

中南米からの移民労働者は、人手不足の緩和に貢献していることに加えて、個人消費や住宅投資の増加にも貢献している。つまり、需給の両面から、好調なスペイン経済を支えているのが、中南米からの移民労働者だ。ある意味で、現在のスペイン経済の活況を支えているのは、中近世のスペイン帝国時代に築き上げた“遺産”かもしれない。

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