2026年は「反EUなら勝利する時代」の終わりか/政治的変化の兆しの一方、経済は停滞ぎみ。フランス発の金融市場の混乱も

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他方で経済面に話を転じると、何より懸念されるのが「トランプ関税」の影響が顕在化してくることである。ドナルド・トランプ政権による圧力を受け、対米輸出依存度が高いドイツの企業などは、アメリカでの現地生産を増やす方向にある。

さらにアメリカ発の「ドル不安」を受けてユーロ相場が上昇したことも、対米輸出の重荷となっている。一方で、通商摩擦を抱える中国向けの輸出も増加は望みがたい。

こうした輸出の不振が、引き続きEUの生産を下押しする。対して、内需向けの生産もそれほど伸びないと予想される。いわゆる軍需品の増産圧力への期待がある一方、生産の主力はあくまで民生品であるから、民生品の増産圧力が高まらなければ、生産の復調は望みがたい。

ドイツの財政支出、特に公共事業に期待する声もあるが、その景気浮揚効果も限定的だろう。そもそもヒト・モノ・カネといった生産要素が有限である中、大規模な公共事業の推進など不可能だ。特に人手不足の問題は深刻であり、それが公共事業を進めるうえでのボトルネックとなる。こう整理すると、景気が加速する展望は描きにくい。

フランス発の金融市場の混乱はあるか?

フランス政治危機に端を発する金融市場の混乱という景気の下振れリスクも看過できない。2025年10月に第二次セバスチャン・ルコルニュ内閣が成立して以降、政治危機は小康状態となっているが、エマニュエル・マクロン大統領が率いる中道派と右派、左派の三つ巴の争いは、2027年の大統領選を念頭に、再び激しさを増してくるだろう。

こうした政情不安を嫌い、主要格付会社はフランス国債の評価を相次いで引き下げている。大統領選に向けて政治危機が再燃する中で、再び首相の辞任が相次ぐ事態となれば、フランスの金利上昇は免れず、同国発の金融不安が欧州全土を駆け巡ろう。もはやイタリアやスペインよりも、フランス発の金融不安が生じる可能性のほうが高い。

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