箱根駅伝5区「山の神」はいかにして生まれてきたか——。そして「4代目・山の神」は現れるのか? 近年の変化とは
今井は山本のセンスと能力を高く評価しているが、二度の区間新は記録だけ見れば、「山の神」に匹敵するものだ。だが、彼は神ではなく、「山の妖精」に終わった。大後前監督は、「巡り合わせなので、彼にとっては不運ですが」と前置きしてこう続ける。
「個人として山本君は、第99回大会、第100回大会と2年連続で5区区間新を出しているので、記録的には山の神の3人と遜色はありません。また、2023年のWUG(FISU ワールドユニバーシティゲームズ)1万メートルでも銅メダルを獲得して、競技実績も申し分ない。
しかしながら、チームの成績が違いました。たしかに城西大学は総合9位、総合3位と順位を上げて破竹の上昇チームです。個人記録がチームの優勝に貢献できるかどうか。
ある意味、チームが優勝できるかどうかは、そのときの運でもあるわけですが、それを含めて巡り合わせの強運をもつ選手が『山の神』という称号を与えられるんじゃないかと思います。『山の神』って、とても重いですよ」
タイムを出して優勝に貢献する。それを踏まえたうえで最後の一押しになるのが、メディアとファンの反応だ(当然ながら、3人とも「『山の神』と呼んでください」とお願いをしてなったわけではない)。
「内輪だけで神だとかいっても認められない。最後は、メディアとファンのみなさんの理解が『山の神』の誕生に大きな後押しになったと思います」
神野は、実感を込めて、そう語る。必要な要素、必要な条件をクリアしてなおかつ、メディアを通してファンや一般の人たちに認知してもらう必要がある。「山の神」になるのは、最後は運だなと思ってしまうくらい、さまざまなことが奇跡的に重ならないと難しい。
裏を返せば、それだけ5区の重要性も注目度も高いということだが、箱根駅伝が巨大化した今、甲子園のような憧れの舞台となり、どこの区間でも出場できればいいと思う選手が増えている。
神奈川大学でも「5区を走りたい」と鼻息荒く、訴えてくる選手が多いという。意欲は大事だが、そこで重要になってくるのは、選手のやる気を買うのではなく、監督が冷静に、その選手の能力を見極める目だと、大後前監督は話す。
「学生は、箱根を走りたいので、どこでもいいからメンバーに入りたいと思うんですよ。だからどこでも走れますというし、5区でもなんでもいいから手を挙げる。でも、5区は特殊区間だけに、やっぱり上りに必要な能力、技術がいるんです」
5区で留学生が「山の神」になる可能性も
上りに必要な能力とは、どういうものになるのだろうか。
「5区は、平地のようなスピードがいらないんです。キロ4分くらいで上っていくので、スピードよりも地面を効率的に押していけること、ストライドの大きさよりもリズムをちゃんと刻んでいけることが大事です。だから、腰高のスピードタイプの選手の適性区間ではないと思います」
腰高といえば、アフリカ人のフォームが思い浮かぶ。これまで5区で区間賞を獲ったアフリカ人ランナーは、19年、第92回大会の日本大学のダニエル・M・キトニーだけだ。
留学生最強ランナーといわれた東京国際大学のイエゴン・ビンセントは、1年時は3区区間新記録、2年は2区区間新記録、4年時は4区区間新記録を叩き出したが、彼がもし5区を走ったらどんな記録を出しただろうか。
スピードが持ち味のアフリカ人留学生は平地区間、とくに2区に起用されるケースが多く、第100回大会でも2区は23校中4人の留学生が駆けた。平地で少しでも優位に展開したいという戦略から平地区間に置かれており、5区を走ったアフリカ人は2人のみだ。
ただ、「坂のトレーニングをして走れば、5区で区間賞を獲れる走りはできる」と大後前監督は言う。今後、5区で留学生が「山の神」になる可能性は十分にある。
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