「究極のエコ暖房」と累計1億円のヒット! 《着る暖房・モモンガ》を生み出した"社員3人の会社"が示す「異端ビジネス」の勝算

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「本物」のモモンガが持つ価値は、見た目だけではない。それは素材や構造に裏打ちされた「すきま風が入らない足元の暖かさ」や、顧客の声から生まれた細部にわたる気遣いに凝縮されている。

「たとえば、両手を上げても脇が引っ張られないゆとりがあるとか、細かな部分にこだわっています。ゆとりはありすぎてもだめ。服を作ったことがないと、この加減は難しいかもしれない」

モモンガのように複雑な全身つなぎは、絶妙な型が重要である。全身を覆いながらも「機敏に動ける」という着用体験を可能にするのは、座っても生地が食い込まず、動いても引っ張られない、長年の経験に裏打ちされた技術の結晶。本物のモモンガでしか味わえないものである。

モモンガ
最新のモモンガは、足元をスナップボタンで留めると通常のダウンのように着ることもできる(写真:株式会社ファーブル提供)
モモンガ
手指も温められるように、ポケットの中は保温性に優れたフリース素材を使用している(写真:株式会社ファーブル提供)

大手が馬鹿らしくて作らないものを作る

コピー品はさておき、機能的な防寒具というと、ユニクロやワークマン、ノースフェイスなどにも大量に並んでいる。それら大手のビジネスを意識することはあるのだろうか。

「ユニクロさんも、ワークマンさんも本当にすごい。あれだけの機能性を、考えられない低単価で作れるなんて驚くばかりです。ライバルなんておこがましいし、目指してもいません。街の腕っ節自慢がプロボクサーに喧嘩を売るようなものですよ」と坂井社長は冗談めかして語る。

まったく違うフィールドに立ち、そもそも大手とは戦わないことが、ニッチな小規模メーカーの生存戦略だそうだ。

「大手が馬鹿らしくて作らないけど、面白くて役立つものを提案していきたいと思っているんです」

ユニクロが追求する「万人向けの普遍性」とは真逆のベクトルだ。ニッチに刺さる尖った利便性や、異端なアイデアは大手がわざわざ採用しない。小さい会社だからこそモモンガは生まれたのだ。

次ページ「面白くて役立つものを作る」ことこそが、最大の成功
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事