「究極のエコ暖房」と累計1億円のヒット! 《着る暖房・モモンガ》を生み出した"社員3人の会社"が示す「異端ビジネス」の勝算
「本物」のモモンガが持つ価値は、見た目だけではない。それは素材や構造に裏打ちされた「すきま風が入らない足元の暖かさ」や、顧客の声から生まれた細部にわたる気遣いに凝縮されている。
「たとえば、両手を上げても脇が引っ張られないゆとりがあるとか、細かな部分にこだわっています。ゆとりはありすぎてもだめ。服を作ったことがないと、この加減は難しいかもしれない」
モモンガのように複雑な全身つなぎは、絶妙な型が重要である。全身を覆いながらも「機敏に動ける」という着用体験を可能にするのは、座っても生地が食い込まず、動いても引っ張られない、長年の経験に裏打ちされた技術の結晶。本物のモモンガでしか味わえないものである。
大手が馬鹿らしくて作らないものを作る
コピー品はさておき、機能的な防寒具というと、ユニクロやワークマン、ノースフェイスなどにも大量に並んでいる。それら大手のビジネスを意識することはあるのだろうか。
「ユニクロさんも、ワークマンさんも本当にすごい。あれだけの機能性を、考えられない低単価で作れるなんて驚くばかりです。ライバルなんておこがましいし、目指してもいません。街の腕っ節自慢がプロボクサーに喧嘩を売るようなものですよ」と坂井社長は冗談めかして語る。
まったく違うフィールドに立ち、そもそも大手とは戦わないことが、ニッチな小規模メーカーの生存戦略だそうだ。
「大手が馬鹿らしくて作らないけど、面白くて役立つものを提案していきたいと思っているんです」
ユニクロが追求する「万人向けの普遍性」とは真逆のベクトルだ。ニッチに刺さる尖った利便性や、異端なアイデアは大手がわざわざ採用しない。小さい会社だからこそモモンガは生まれたのだ。



















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