「想像以上に老朽化進んでいた」 「築70年超のボロボロ団地」なぜ満室? 入居者の"意外な用途" 90万円で団地を落札したオーナーに聞いた"仕掛け"
何か事業を始める時には、事業採算性を重視するために計画を立て、それに基づいて準備や作業を行うことは普通。しかし、この団地の改修にはそんな様子はほとんど見られない。街の雰囲気と同様に、あくまでゆったりとした時間軸のなかで作業が進められているのだ。
とはいえ、それはあくまで入居者や、筆者のような傍観者の視点であって、不動産の所有者たる吉浦さんにとっては採算性は大切だ。
そのことについて聞くと、吉浦さんは「元々、90万円で購入した物件ですし、月額1万円の家賃は3年間の限定です。その後は3万円にするなど徐々に家賃を上げていくことなどで、10年で黒字化できる見通しが立っています」と話していた。
収益性が下がっていた物件を超人気にしたことも
このように自信を示すのは、吉浦さんがこれまでに築古物件を再生してきた実績があるからだ。最初は、祖父から受け継いだ福岡市南区にある2棟のマンションの再生を手がけた。最寄り駅から徒歩数十分程度で、収益性が大きく低下していたが、アトリエなどとしても使えるDIY可能物件として再生したところ、今では常時満室となる人気物件となっている。
福岡県大牟田市でも、駅周辺の建物をアーティスト向けや店舗として改修し、こちらも成果をあげている。こうした取り組みに共通するのが住宅から「非住宅」への改修。上記のような成果をあげるようになるまで、住宅から住宅への改修では、より高額な家賃を得るといったことが難しかったためだ。
「すべての築古物件が私の経験に当てはまるものでもありませんし、地域や劣化状況によっても再生できるかは異なってきます。ただ、居住用途から、それ以外の用途とすることができるケースはかなりの数にのぼると見ています」と吉浦さんは話していた。
今後は、旧畑田団地のような再生の取り組みを継続することで、主に九州において築古物件の管理戸数を1万戸にまで拡大するという構想を、吉浦さんは持っている。
ところで、ここで冒頭の団地の話、団地再生の話に戻る。前述したように高齢化が進んでいる。そのためエレベーターがない建物については上層階が空室になることが多く、それが空室率が高くなっている要因の1つとされている。
旧畑田団地の再生の取り組みは、この団地上層階の空室改善のヒントになるのではないか、と筆者は考える。さずがに家賃1万円は無理かもしれないが、それなりに抑えた家賃で、例えば起業を目指す人たちに貸し出すことで、若い世代が団地内に出入りをするようになり、それによりコミュニティが元気になる、というイメージだ。
ある住宅供給公社の関係者によると、公団の団地ではすでに非居住用途の入居者にも部屋を貸し出すことが認められているというが、公営団地ではそれが法律上認められていないのだという。国や自治体は今、地方創生・再生の一つに団地再生を掲げており、取り組みを進めているが、だったら公営団地についてもより柔軟な部屋の貸し出しのかたちがあっていいはずだ。
団地は、小中学校や公園が近くに設けられているなど、とくに子育て世帯にとっては暮らしやすい環境が整っている。この物価高の世の中に、比較的低い家賃で入居できるのも魅力の一つだ。もちろん、設備や間取りの点で不自由を感じることも多いだろうが、最近は退去時の修繕義務がないDIY可能な部屋や、リノベーション済の部屋も一部で供給されるようになっている。
築70年以上という旧畑田団地の取り組みは、やり方次第では、老朽化はもちろん、最寄り駅から遠い、交通アクセスが不便、エレベータがないなどといった団地の課題を克服し、住民あるいは利用者を呼び込むことで再生につなげられる可能性を感じさせた。
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