ワーナー買収劇「ネットフリックス勝利」の舞台裏、パラマウント・スカイダンス、コムキャストの両陣営に勝てた理由とは?

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ワーナー側が気にしたのは、パラマウントが実際に買収資金を確保できるのか、という点だった。パラマウントはアポロ・グローバル・マネジメントや複数の中東ファンドからの資金提供を盛り込み、エリソン親子が後ろ盾になると説明していたが、ワーナー幹部の間ではその資金の確実性に疑念が残ったと、関係者は話す。

Netflixとワーナーはコメントを差し控えた。

「ノーブル」「プリンス」「チャーム」

最終局面が近づく中、ワーナー側のアドバイザー陣はニューヨーク市内の複数のホテルに作戦本部を構えた。ワーナー内部では、この一連の売却交渉を「プロジェクト・スターリング」と呼び、自社を示すコードネームとして「ワンダー」を用いていた。交渉相手には、それぞれNetflixを「ノーブル」、パラマウントを「プリンス」、コムキャストを「チャーム」と名付けていた。

一方のNetflix側では、スペンサー・ニューマン最高財務責任者(CFO)が交渉全体の旗振り役を務め、企業戦略部門トップのデボラ・ベルトゥッチ氏が日々の陣頭指揮を取った。このほか、法務責任者らも中心メンバーとして動き、交渉チーム全員が共同CEOのテッド・サランドス氏とグレッグ・ピーターズ氏に直接報告していた。

取引の輪郭を固めていく様子もハイテク企業らしかった。対面ではなくビデオ会議が中心で、Zoomに仮想の作戦本部を置き、発言は挙手機能やチャットで進めた。資料の確認や修正もGoogle Docsで同時編集しながら進められた。

協議は感謝祭明けの1日以降、一気に熱を帯びた。ワーナー側アドバイザーは各社と立て続けに対話し、契約条件や金額の詰めに入った。コムキャストは傘下のNBCユニバーサル部門をワーナーと統合する案を提示。パラマウントは差別化を図るため、提示していた違約金を50億ドルへと倍以上に引き上げる案を示した。

最終的にワーナーは、Netflixの提案が最も優れ、重要条件に対しても最も柔軟だと判断した。すると3日、パラマウントはワーナー取締役会に対し、売却手続きが「汚されている」と非難する強い文面の書簡を送付。さらにNetflix案には規制面でのリスクがあると指摘した。

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