バフェット氏の手紙に込められた強欲CEOへの痛烈な警告、「自分の業績はすべて自分の力による」と思い上がってはならない
幸運に恵まれたというこの考え方が、まさにバフェット氏の慈善活動を支えてきた。同氏にとって寄付とは、自分が膨大な富を築くことを可能にした社会システムに何かを還元する行為なのだ。
だが、こうした考え方は、特にシリコンバレーの一部エリート層の間で支持を失いつつある。彼らはむしろ、「世界を救うテクノロジー」を通じて社会に貢献しており、受け取った以上の価値を還元していると感じているようだ。
ベンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセン氏は、2023年のブログ投稿「テクノ・オプティミスト宣言」の中で、この哲学を最も端的に表している。「市場経済における技術革新は、50対1の比率で本質的には慈善的な行為だ。新しい技術からより大きな恩恵を受けるのは、それを生み出した一企業か、それを使って生活を改善する数百万、数十億の人々か?その答えは明らかだ」としている。
この考え方は企業経営のあり方にも浸透しつつあり、取締役会がCEOに巨額の報酬を与える例が増えている。彼らは自らの成功に運が関与した可能性を認めようとせず、「自分がその全てを稼いだ」と主張するのが常だ。バフェット氏は、報酬開示の義務化は高額報酬の経営者を恥じ入らせるどころか、むしろ嫉妬を生み、報酬競争をさらに激化させているだけだと指摘する。「裕福なCEOたちをいら立たせているのは、他のCEOがさらに金持ちになっているという事実だ」と書いている。
「人はいつだって変われる」
バフェット氏は、このようなタイプの経営者がバークシャーを率いることを望んでいない。同氏は手紙の中で2度にわたり、バークシャーの経営者らは裕福にはなるが、王朝のような富や「見せびらかす」のための富を望むべきではないと述べている。
自らの境遇が富の形成に大きく影響していると認識するリーダーを育てることは、傲慢(ごうまん)さと、それに伴う誤りを防ぐ助けになる。自分の力で全てをコントロールできるわけではないことを受け入れられる人は、失敗からの立ち直りも早い。
バフェット氏は彼の読者にも、その余地を与えている。これまで親切や寛大さに欠ける生き方をしてきたとしても、まだ遅くはないというのだ。「この手紙を読むすべての人に、幸せな感謝祭を。そう、嫌なヤツらにも。人はいつだって変われる」。同氏の手紙は、このように締めくくられている。
(ベス・コウィット氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、米企業を担当しています。以前はフォーチュン誌のシニアライター兼エディター。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
著者:Beth Kowitt
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