高市首相が指示した「労働時間の規制の緩和」と「少子化対策」は"絶望的"に両立が難しい理由
厚生労働省が2025年8月に発表した今年上半期の出生数は、33万9280人。4年連続で40万人を下回り、上半期として比較可能な1969年以降で最少を更新しています。
高市政権で労働時間規制が緩和され、家庭生活や睡眠時間を犠牲にする働き方が再び評価される社会になれば、出産・育児の敬遠がさらに進む可能性があります。
また、職場環境は過酷な長時間労働に耐えられる男性ばかりに逆戻り。多様性に欠け、結果的にイノベーションを起こせない硬直化した産業構造になる懸念があります。
労働時間が正確に把握されていなかった“学校”の今
さらにワーク・ライフバランス社の小室社長は言います。
「知っておいてほしいのは、労働時間の上限緩和を続けた業界がどうなったのか、ということです。
残業代が支払われず、労働時間が正確に把握されていない教員の業界は、精神疾患による休職・離職や過労死がいまだに起きています。その実態が知れ渡ってきたことにより若い人が教員を目指さなくなり、学年初日に担任がいないまま始まるクラスが多数存在するほどの著しい人手不足になっています。
2024年10月1日時点の全日本教職員組合の調査によれば、34都道府県11政令市で教職員未配置が4739人に達し、「4月から今も担任不在で、交代で教職員が対応している」という現場の声も報告されています。
医療業界では、医大を出たばかりの研修医が過酷な勤務医の労働環境を避け、美容外科で働き始める『直美』と呼ばれる現象が加速しています。また深夜・早朝の長時間労働が常態化し、“ブラック霞が関”とまで呼ばれていた国家公務員は、10年未満の離職者数が激増。東大出身者からの人気は落ち続けています。
業界としてロビイング活動をしてまで『働き方改革』施行を5年遅らせた建設・運輸は、他業界に比べて著しく有効求人倍率が高い、つまり人が採れない業界となってしまいました。
ここでさらに『人手不足解消のため』と労働時間を延ばせば、日本の未来はどうなるでしょうか。私は『国ごと選ばれなくなる』と考えます。
人材の海外流出は、より給与格差の大きい女性で顕著です。外務省の統計によると、増加の一途を辿る海外永住者の6割超は女性です。
少子化の影響に加えて、青年が意思を持って国を出ていく国になれば、没落の一途です。だからワーク・ライフバランスは捨ててはいけない。それこそが、人口が減り続けている国の生き残り、再興戦略だからです」(小室社長)
新政権が過労死ラインを越える判断を下すのか、注目されています。
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